うちのマネージャー 37
「健哉くん?…だいじょうぶ…?」
自分がつらいわけでもないのに、そう言って瞳を揺らす共恵。
頼り無げな表情に、無意識に欲望がもたげてくるのを感じた健哉は、誤魔化すかのようにチュッと軽いキスを共恵の頬に落とした。
「ん。明日早いだろ。寝よーぜ」
「…うん」
(…誤魔化されたの…かな?)
なんとなく釈然としないものを感じながらも、逞しい腕に抱かれ、共恵はあっという間に眠りについていたのだった。
†††
まるでフィルターがかかったようだ。一昨日までと何ら変わりないはずの光景が広がっているというのに。
目の前で行われる部活動。いつもの休日と同じく、午前から開始されたそれは、一見何の変わりもないようだが、共恵にとっては全てが一変して見えていた。
当たり前だ。当の本人である共恵が一昨日とはまったく違うのだから。
今の共恵は、目の前で部活に精を出す部員を見守っているようでその実“健哉とそれ以外”という認識でしか部員たちを見ることが出来なくなっていた。
あのラケットを握る大きな手が、笑い合う口元から見える赤い舌が。
「小原」
あたしの躯を撫で回して、弄んで。
「…小原ぁ?」
虜に、した。
「おいっ小原っっ!!」
「えっ!?あっ!!」
半ば怒鳴るような声にびっくりして横を向けば、そこには部長である総介がいた。
いつから名前を呼ばれていたのだろうと、共恵は健哉からようやく視線を外す。
「どうしたんだ?ぼんやりして…もしかしてまだ体調悪いのか?」
「う、ううん!平気だよ。」