うちのマネージャー 19
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―…本当はキスさえも初めてだった。
共恵は昨日から次々“女”として開発されていく自分自身を思い返していた。
SEXに対する興味はあった。知識だってそれなりには持っていたつもりだった。けれど…―
「…っぁ…んふっぅ…」
…あぁ、たまらない
甘美な口付けに唾液を引きながらも遠ざかってしまう健哉の薄い唇を眼で追ってしまう…。そんな自分がここにいる。
“知っている”ことと“体験する”こと。それがこんなにも違うことだと、共恵は身を持って知ったのだ。
†††
「先入ってろよ」
二人は今、リビングから少し離れた風呂場の脱衣所にいた。
あれから何度も獣のように互いの唇を貪り、共恵はクリ○リスと乳房への愛撫だけでさらに2度ほどイかされた。そして突然健哉の手が止まったかと思うと、「風呂に入ろう」と言われたのだった。
快感に翻弄され放心する共恵を余所に健哉は風呂場を捜し当て、湯を沸かし、その逞しい腕に抱き上げられ連れてこられたのだが…―
「…健哉くんは?」
理由も言わず風呂に入ると言い出した健哉の真意が分からず、戸惑う共恵は不安げ言い、その手は無意識に健哉の袖口を掴んでいた。
その行為は健哉がこの短時間の中で共恵の躰だけでなく、その精神までも左右する存在になったことを意味していた。
自分が快楽に翻弄されて我を忘れている間に健哉は自分に愛想をつかしてしまったのではないか…。風呂に入っている間に帰ってしまうのではないか…。
共恵の胸中はそんな想いでいっぱいだっだ。
「…一人でなんてぃやだよ……」
甘えた声を出し裸の躰を押しつけてくる共恵。潤んだ眼で見上げると―…
…―っあ!
あの獣の眼が見据えていた。そして―
「あっ!ひぁっ!」
本物の獣のように首から顎にかけてべろんっと一舐めされた。
「…ちゃんと後から入るから…いい子だから先に入ってろ」
「…はい」
ぞくぞくと、身震いがした。
この獣に食べられたい。…自分という人間を支配して欲しい。
共恵が心から思った瞬間だった………。