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うちのマネージャー
官能リレー小説 - 学園物

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うちのマネージャー 127

気がつけば、そんな妄想に囚われる彼女を尻目に、健哉はあっという間に立ち去っており、周りの部員達もてんでばらばらにそれぞれのメニューを黙々とこなしている。
そんなに急いでいたのかとあっけにとられる一方、どうしたものかと考えてしまう。あれほど危惧していた聡介の姿が無いのは幸いだったが…
どうしよ…と思いながらも、仕方ない、掃除でもしようと箒を手に取った共恵の耳に、突然それは飛び込んできた。

「え、ほんと?」
「ほんと!マジマジ!」

まったく…今年の新入生は…

思いながらも箒を手に、外に向かう。

今年の新入生は、それはそれはお喋りだ。普段は部員を厳しく叱ることも無い名ばかりの幽霊顧問でさえ、その噂をどこかからか聞きつけ、注意しに来たことがあるくらいだ。本来ならマネージャーであり、先輩でもある自分が注意すべきことなのかもしれない。でもいまやここは、自宅を除けば、数少ない健哉との逢瀬の場なのだ。自分の言動で、部内に波風が立つようなことは出来るだけ避けたい。
気にしないように、と思えば思うほど彼女達の浮足だった噂声が耳に届いてしまう。
もう少し、離れた場所からやろうかな、そう思った時だった。

「え!?小野塚センパイが!?」
「そう、3年の三条さんと!!あたし今さっきみたんだから!もー興奮しちゃった!」

どくっ…

警笛を鳴らすように、共恵は自分の心臓がその鼓動を早めたのを確かに感じたのだった。


三条家

物心つく頃には、自分はもうその名前を知っていた。
この名前は共恵が思っている以上にこの国では有名なのだろう。高校生になって、この街に引っ越して来て、如実にそう感じるようになった。海外赴任が決まるまで都心に働きにでていた父が、夕食の席でその名をたびたび口にしていたのを覚えているし、共恵にとってはさして興味も無かったのだが、越して来た町に件の家があるのだということを、夕食時にミーハーな母が興奮気味に話していたことも、ぼんやりと覚えている。けれどそれも随分前のことだし、自分にはまったく関係のないことだと思っていた。
今ここで、後輩から彼の名前と一緒に聞くことになるまでは。
自分の住む街の東の外れ。毎朝の通学方向とは真逆に、一般階級の自分たちにとっては近寄り難い、高級住宅街がある。その一角にある三条のお屋敷に自ら足を踏み入れる日が来るとは、引っ越してきた当初はまさか思いもしなかった。こうして目の前にして驚くのは、そのあまりに広大な敷地面積だった。
あの後、掃除もそっちのけで後輩達の話に聞き耳を立て(そんなことはしなくても、充分聞こえて来たが)聞いていれば、なぜかこの一般中流家庭の子供ばかりが通う公立高校の正門に三条家の車が横付けされ、颯爽と現れた御令嬢によって、下校しようとしていた健哉が連れさられたというのだ。
だがこの表現にはいささか語弊がある。三条家の車が横付けされたこと自体は、この学校に通うものにとってはさして不思議なことではないからだ。なぜなら三条家の御令嬢は、共恵たちが通うこの高校に同じように通学しているからだ。さすがに自分が転入する時にその事実を母から聞かされた時には、興味のなかった自分でさえなぜ、と思ったものだ。

門が開いているから入れたものの、バレたらマズい。勢いで来てしまったものの明らかに不法侵入だ。外から屋敷の中を伺うだけにしろ、冷静に考えるととんでもないことをしようとしている気がする。

あ、そうだ、携帯があったわ

すっかり忘れていた携帯で健哉にかけてみる。運が良ければ無事を確認出来るし、本当に連れ去られてこの屋敷にいるなら、どこかで着信音が鳴るかもしれない。慌ててポケットから取り出して汗ばんだ手で、健哉の名前を呼び出した。

お願い、繋がって‥!

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