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性徒憐(リン)の日常
官能リレー小説 - 学園物

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性徒憐(リン)の日常 25

「あなたは可哀想な人ね
他人に自分の価値観で当てはめようとして、新しいことを見ようとしない
まるで食わず嫌い
自分が食べられない物を食べる人を、自分が食べる物を食べない人を変だと呼んでる
私から見たらあなたの存在は悲しいくらいに痛々しいわ」
私は彼を強く抱き締めて意図的に胸を押しつける
「一線を越えるのが怖いのを必死で隠してるだけなのね」
「違う………」
押しつけられた制服の下で、くぐもった声が響く。
「なにが?」
「君は……、君はそんな事ひとつも思ってない」
彼はきっぱりと言い切った。
「――――な」
私は言葉に詰まった。初めてだった。
泣いて逃げると思った彼は、まっすぐに私を見ている。
後部の大きな窓から、朝の光が消えては差し込んでチカチカする。
日に透けて彼の髪が薄茶色に染まる。
私の後ろ側は真っ暗なのに、彼の後ろは明るい。

私はどんな姿で彼の目に映っているんだろう。

無理やり触れさせた手を、彼はゆっくりと引っ込めた。
「降りよう。そろそろ学校だよ」
バスのフロントガラスを見ると青空が見えた。朝見た空よりも、濃くて鮮やかなブルー。
朝日を受けて白く輝く校舎の壁。
「………学校」
私は、初めて自分の学校を見た気がした。そんなはず無いのに。
「そうだよ、早く!」
彼は急かすように手を振って私を促す。
私達以外に、ここで降りる人はいない。先に飛び出した彼が振り返って、また急かす。

私はステップの上で、ふと足が動かなくなった。
彼が着ている制服のシャツの白さが、チカチカと眩しい。

眩しい。目を開けていられない。

「行かない」
「えっ」

ブシュ。と、音を立ててドアが閉まった。
びっくりする彼の顔が窓ガラス越しに見えた。
バスはゆっくりと発進する。

「………!!」
声はガラスに阻まれて聞こえてこない。
慌てて追いかけてこようとする彼の姿を、人事のように見つめていると、背後から男の手が伸びてきた。
さっき、私達を見ていたサラリーマンの男。
「!」
彼の顔が歪む。……欲望を嫌悪する表情。

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