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性徒憐(リン)の日常
官能リレー小説 - 学園物

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性徒憐(リン)の日常 23

「……ない」
絞り出したような声。
「そう」
そんな気はしていた。聞くまでもないことだったのかも知れない。
「あの、さ……」
彼が話しかけてきた。
「なに?」
「変なこと、言うようだけど」
震えてはいたけれど、先程までと違って、彼の口調に弱々しさはなかった。
「初めて、君を見たとき……
 助けたい、って思ったんだ」
「助ける?」

私を?何から?

「変なの。変なこと言わないで」

ざァっと、風が吹き抜けて街路樹を揺らす。
制服のスカートが、私の髪が優しく弄られる。
彼の前髪も同じ風が撫でていく。

「変じゃない」

「変だよ。
 だってあなた、私のこと全然知らないじゃない」
「そうだね。
 君の名前も、歳も、これまでどんな風に生きてきたのかも、僕には分からないよ。
 でも……」

一際強い風が、彼の言葉をかき消すように吹く。
彼が私を「助けたい」と思った動機は聞き取れなかったけれど、
最後に呟いた台詞だけは、妙にはっきりと私の耳に届いていた。

「……二度と、後悔はしたくないんだ」
「あなたの概念や価値観が必ず周りに当てはまると思わないで…
迷惑だわ」
「……それは、そうかもしれないけど……。俺は、そんな難しい意味で言ったんじゃないよ」
もどかしそうに、彼は眉間を寄せる。
「……バス、来たよ」
坂の上から現れた萌黄色のバスが、ゆるやかに下り坂を降りてくるのが見えた。まだ朝も早いせいか乗客の影は僅かだ。

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