性徒憐(リン)の日常 22
朝。気だるい感覚の中で燐は目覚めた
「ん………」
横には冴子先生の裸体が横たわっている。妖しい程に白い肌は、朝の光に照らされて色あせてしまいそうだ
冴子先生には月の光の方が似合う
私は、ぼうっとした頭でそんな事を考えながら、アイボリーの薄手の毛布で、その肌を覆い隠した
ベッドから抜け出して洗面所に向かう
いつもと変わらない朝なのに、変に空気が張り詰めているように感じた。
時計を見ると、まだ早い。
けれど私は、冴子先生が片付けてくれたクローゼットから、制服と下着を出し身に着けた。
清潔な白い下着。白いソックス。冴子先生が洗ってくれたもの。
昨日のままのカバンを持って、私は外に出た。
さわさわと、街路樹が風にそよぐ音。湿った朝の空気はいつもよりも濃くて瑞々しい。
車の通りも無くて、町が無人になったみたいな錯覚を覚える。
無人の街。無人の学校。誰もいない。いなくなったら……。
私は………。私もいなくなるのかしら。それとも……。
「あっ」
ぼんやりとそんな事を考えていると、背後から聞こえた声に引き戻される。
振り返ると、燐と同じ学校の制服に身を包んだ少年が立っていた。
「君、あのときの」
「…………」
アパートの屋上で男に犯されていたときに、飛び込んできた子。
「また会ったね」
少年は人懐っこい笑顔を見せた。
「……大丈夫?」
それが心配そうな顔に変わる。
「なにが……?」
突き放すように云うと、少年は黙り込んだ。触れてはいけないことだったのか……と、困惑と後悔しているのが伝わってくる。
「俺、君と同じ学校だったんだね。女子の制服なんて良く見てなかったから……。ねぇ、何年生なの?」
(同じ学校……)
校舎で見かけただろうか?転校生が来た噂を聞いただろうか?
いや。あったとしても、私には関係ないし、耳にも入らない………。
「名前は?」
少年が尋ねる。私のことをまだ知らない?
「教えない」
「え……ッ?」
「同じ学校だもの、探してみたらいいじゃない」
「え、でも」
「学校で私を見つけられたら……」
私は彼の顔を見て、笑顔を作って見せた。
「セックスさせてあげる」
「!!」
彼の顔が真っ赤になる。純情?
その後、悲しそうな顔になる。そういえば、前に何か言ってたっけ。
「そんなのしなくていいよ」
「怒ったの。みんな喜んでするよ?」
「俺は違う」
「ふぅん」
「そんなの良くないよ」
彼は斜めに目線を落として、言った。
「したことあるの?」
「ぇ………」
「あるんだ」
「……………」
ふるふると彼は頭を振る。