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誰よりも熱くて長い最後の一年
官能リレー小説 - 学園物

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誰よりも熱くて長い最後の一年 3

彼女は原付で登校しているけど、特に問題になっていない。元々田舎の学校だし、校則なんてのは最後の一年になるずっと前からすでに形骸化している。
不満も抑圧もないから、トラブルも起こさない。そもそも、経済的にも恵まれている。
竹刀や金属バットを持ち歩いたりせず、もちろん物も壊さない。
この学校には『なぜあるんだ?』なんてものもいくつか存在する。扇風機と電気ストーブがあるし、教室に炊飯器や冷蔵庫だってある。備品でなく、ここまで生徒が減る過程で快適さを求めて校内に持ち込まれて残ったままになっているものだ。

優里亜は建築会社の娘であり、卒業後もこの町に残って両親たちと暮らすと聞いた。
この1年が終わるとみんなそれぞれの道を歩む。ちょっと寂しいけど仕方のないことだと思う。だからこそ最後の1年は楽しくやりたい。

陽菜と一緒に校門の前までやってくると、反対側からひとりの女の子が歩いて来た。
「あれっ…恋?」
「久しぶり。チーくん、陽菜」

芸能界にいた彼女がこんな田舎の寂れた学校になぜいるのかと最初は思った。要するにアイドルを挫折したそうだ。
グループ内での人間関係や他のグループとの競争にアンチからの誹謗中傷などに打ちのめされて引退したらしい。
確かに、心を病んでもここに逃げ込めば面倒なものはない。すべての部活はとっくに解散してしまっている。もちろん生徒会も同様だ。いろんな分野でゆるくなってしまっている。先生が授業中に寝てしまうなんて事もある。
組織的な活動がないだけで、生徒の間で深刻な分断や対立もない。体育もいちいち男女の区別がなく、更衣室も同じだ。イベントも定時制と同じように簡素化されている。
クラスが一つだけだから当然他の教室は空き教室だ。隣のクラスはプレイルームで、お昼を食べたりプロジェクターでレンタルのDVDを見たりカラオケを歌ったりする。

十河恋(そがわ・れん)。
小学校卒業と同時くらいにこの町を去り、芸能界を夢見て旅立った子だ。
アイドルグループにいたのは知ってるし、テレビに出ると聞いた時には陽菜とともに見逃すまいと正座して見守ったことだってあった。

「恋…やめちゃったの?」
「別にやめたってわけじゃ…いったんお休みして、ここも最後だって言うし、みんなと1年過ごしたかったし…」
明らかに無理をしてるのは僕にもわかった。
彼女も幼いころから知ってる仲間だ。励ましながらやっていこうと思う。

教室に入る。すぐに11人全員が揃う。

11人しかいない教室はいつもと同じなんだけど、少し広い部屋に感じる。
この場所で過ごすのもあと1年だと思うと、ちょっと感慨深い。

「みんないるね、今日も、そして今年もよろしくね」
教室の扉を開けて担任の万谷桜(よろずや・さくら)先生が入ってくる。
25歳。若くて可愛くて、友達感覚で接することができる先生。
結構な巨乳の持ち主で、特に夏場は服装もゆるゆるで、男としてはちょっとドキッとなる。

過疎地の学校なので、ほとんどの先生は非常勤。
ただ、この桜先生は数少ない正規の先生だ。

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