君の人生、変えてあげる〜第2部〜 5
「このクラスに来るのは、特に楽しみにしていました……男の子が、いるって聞いて。私は初等部からここにいたので、それは特に、すごく、どんなクラスになったんだろう、って思ってたんです」
「先輩なんですか?」
胡桃ちゃんが尋ねる。
武田先生は可愛らしい笑顔で頷く。
「初等部からここに通ってる子だったら、文化祭とかで会ったことがあるかもしれないかな…って言われても、私だって覚えてないけど。大学まで女子校で過ごしてきたから、男の子と一緒の学校ってのには興味があったんだ」
「不安とかって、ありませんでした?」
思い切って聞いてみる。
「ふふっ、私は全くないかな」
武田先生は窓の向こうに視線を向けた。
「……先生の、現役だった頃にも、共学化の話、ちょっとあったんだ。私は、わくわくした。だって、電車で見かけるだけでしか接することのないみたいな人が、同じクラスに来てくれるんでしょ…でも、やっぱり、不安だ、って言った子の方が多くて、それで、その話はそのときは進まないことになったの」
共学化の話が過去にあったというのは初めて聞いたような気がする。
「たっく……酒本くんの場合は特例でまだ正式に共学が決まったわけではないんですよね」
そう言うのはこの学校の理事長の娘である香椎茉莉菜ちゃんだ。
「今から話し合うんだね。どう動いていくか私は見守るしかないけど…それと、先生の前だからってかしこまる必要はないよ。いつも呼んでる風でいいじゃない」
先生は改めてクラス全体を見渡した。
「今日は、最初だし、このクラスのこと知りたいな、って思って、あんまり授業しなくてもいいかな、って思ってます」
歓声のような声が上がる。
「男子が…酒本君、たっくんって呼ばれてるのかな?が来てから、けっこうすぐ、みんなと仲良くなったの?」