君の人生、変えてあげる〜第2部〜 4
飛鳥ちゃんや胡桃ちゃんの考えていることが僕にはまだわからない。あれは短期間での話であって今からそうなることはないと思いたい。
そんなことを考えているうちに朝のHR開始を告げるチャイムが鳴る。教室に入ってきた人物の姿に、僕はドキッとなってしまう。
「急な話でごめんなさいね。深沢先生が家庭の事情で休職される為、今日からみんなのクラスの担任代理を務めます、三上佐智子です」
一同どよめいた。
「三上先生!」
飛鳥ちゃんがどよめきを打ち破るようにまっすぐ手を挙げた。
「はい、原田さん」
「ご家庭の事情って、どうなさったのですか?私たちに手伝えることはありますか?」
「それはまだ、私たちにも情報がありません。何か分かったら、皆さんに伝えますね」
「先生!」
胡桃ちゃんも手を挙げる。
「はい千葉さん」
「現代文や古典の授業はどうなるのですか?」
「それは、皆さんがたぶんまだあったことがない、武田先生が担当します。例によって、女性だから安心して下さい…三月に大学をでたばかりの、ピチピチの新しい講師です」
……なんか先生、一瞬僕の方を見たような気がする。
三上佐智子先生。
保健体育の授業の時に話を聞いたのが初対面だった、シングルマザーの先生。後で聞いたら25歳と、想像した以上に若かった。顔立ちは幼げで可愛らしい。そして僕はこの佐智子先生とも肌を重ねた仲である。
「今日古典の授業あったよね」
「……1時間目だ」
そうひそひそ話す声が聞こえる。
佐智子先生は他の連絡事項を述べて教室から出て行った。
チャイム。
「おはようございまーす」
がらりと開いた扉から元気はつらつな声が響く。
…もし、制服を着ていたら、転校生でも来たかと思ってしまうだろう…
佐智子先生も少し幼げな顔立ちだが、この人はもっと…さらに小さい?し、本当に同級生みたいな感覚だ。
「1年1組の皆さん、初めまして。今日から皆さんに古典と現代文を教えることになりました、武田恵令奈です。よろしくお願いします」
あまりの急展開について行けないでいたクラスのみんなも、なんだか可愛らしい最初の挨拶に温かい拍手で迎えていた。