君の人生、変えてあげる〜第2部〜 1
季節は秋、少し冷たい風が吹く朝。
「少し涼しくなってきたな」
そう思い呟きながら、僕はいつも通り学校の校門をくぐる。
僕―酒本拓真―がこの涼星高校に通うことになったのは、この2学期の始まりの日。この学校に通う男子生徒は、僕だけだ。
この1か月ちょっとの間で、僕の人生というか、環境は大きく変わった。いろいろなことがあった1か月だったと思う。
そして、今日からまた、新しい気持ちで学校生活を送ることになる。
生徒会の役員になったのだ。
僕を温かく迎え入れてくれた人たちへの感謝と、もっと過ごしやすい環境を作りたいという思いと。みんなへの恩返しを胸に精いっぱいの気持ちを語り、それがかなった。楽しみもある。不安もあるけど…皆が選んでくれたのだからやらなければ、という責任感が生まれた。
「……眠いな」
生徒会役員としての初登校。選挙、開票、そのあともいろいろあった。親しい人たちから送られてくる祝福のメッセージ。それに一つ一つ感謝の返信…帰宅してからずっとそんな風だったし、夜も何故だかあまり眠れなかった。初日からこれじゃいけないな、と思い僕は教室に向かう前に校内の売店へ足を運んだ。
「栄養ドリンクがいいかな、それとも…」
ドリンクの棚に向かうつもりだったが、ふと目に留まったのは週刊漫画雑誌。こんなの置いていいんだ、と思い眺める。そこには見知った顔だ。
『Cloverガールズ集合!!』
表紙の水着姿、そして笑顔で映るのは僕のクラスメートの一人、浅岡海里ちゃんのお姉さん、峰代さんに、2年生の星野先輩。それに2人加わりグラビアを飾っている。
Cloverというのは峰代さんが所属している事務所の名前だと以前海里ちゃんに教えてもらったことがある。
ただ峰代さん、芸名を変えたのだろう、「峰あさな」という名前になっていた。その隣が「星乃しおん」こと星野先輩、さらに「柚木未来」さんと「SORA」という子が並んでいる。
「あっ!酒本くんも私たちのグラビア見てくれてるんだ!嬉しいなぁ」
「えっ」
表紙に見惚れていると、急に背後から声をかけられた。「私たち」?でもこれは星野先輩の声じゃない。では…
「はじめまして、だよね。酒本くんのことは前から聞いてて、ずっと気になってたの」
そこにいたのは、雑誌の表紙のひとり、「SORA」さんだった。
グラビアと寸分違わぬ顔、同じ笑顔、そして、制服からも水着姿と同じように豊かに見える胸。
学年章から見ると二年生のようだ。
「あ、ありがとう、ございます」
そりゃあ、表紙の人がいきなり後ろにいたらすぐに平静にはなれない。
「あの、SORAさん、って、お呼びしていいのでしょうか?」