君の人生、変えてあげる〜第2部〜 29
上半身を脱いでいく。
1組の人には見慣れた僕の傷も、2組の何人かはまだ見たことはなかったのでちょっと視線を感じた。
今日は、ひーちゃんのお言葉に甘えて、ここで座った。
ひーちゃんは描き始める。
ひーちゃんは時々僕の方に視線を向けながら、「ここはこうした方がいいかな」「ちょっと違うかな」と独り言をつぶやきながらキャンバスに鉛筆を走らせ、僕の姿を描いていく。
「本多さん、順調なようね」
「はい。モデルがいいですから」
久保田先生が近づき、ひーちゃんとそんな会話を交わす。
“ひーちゃん、モデルだったとき、こんな感じだったんだな…”
描きやすいように固まっているのはけっこう緊張する。ひーちゃんに何回もこんな状況を、強いていたのか…
そのうち、今日の美術の時間は終わる。
「ひーちゃん、先週まで、ほんと、ありがとう」
僕は服を着る前にそう言って頭を下げた。
「いえいえ、こっちも筆が捗ったよ。たっくんがモデルになってくれて良かった」
「そう…かな」
「たっくんも頑張った!」
着替えに入ろうとする僕の背中を押したのはさっちゃんだ。
「たっくんのおかげで私も脱いでモデルになろうと思えたからね」
最初傷を隠すようにしていたさっちゃんは体育の着替えではけっこう堂々と着替えるようになっていたので、1組内ではその傷のことは皆知っていた。だから今回さっちゃんの体を初めて見たのは2組の人。
実はこの時間の始め、さっちゃんは僕に先立って、しかも全部脱いでしまったので、僕が流れで上半身だけ脱いだのが逆に恥ずかしくなってしまっていた。