弾かれたボールをキャッチしたのは梨奈ちゃんで、すぐに前線を走る凛ちゃんへパスを出そうとしたが、

「あっ、うわ！？」

カットしようとした海里ちゃんの胸に当たって弾み、そのまま海里ちゃんがドリブルして進む。

「海里！」
「有佳、任せた！」
サイドから走り込んだ有佳ちゃんがゴール下へ。シュートが決まり速攻で僕らのチームが先制する。

しかし沙羅ちゃんたちがそれをやり返すようにして追いつき、試合は一進一退の攻防となる。

　試合前の作戦会議で「とにかく沙羅ちゃんの動きを抑えよう」と決めていたのだけど、抜かれてしまえばあっという間に得点されてしまう。
　守りを固めるより、攻めないと…
　そうこう思っているうちにハーフタイムになる。

　「ちょっと作戦変更だね」
　ハーフタイムに有佳ちゃんが話し始める。

「ジャンプボールでは沙羅には勝てない…その後でボールを奪って素早い攻撃ができるかだ」
「高さでも沙羅ちゃんと凛ちゃんが上だもんね」
「そこで、足の速い柚希と天音が前線にダッシュする」

「うん」
「やってみる」
名前を上げられた2人がうなずく。

後半戦の始まる前、有佳ちゃんはある事を明かした。

「凛は中学時代のライバルだった。私が中学最後の試合で凛に大怪我させちゃって…あれがなかったら凛は今もバスケ続けてくれてたはずなんだ」

　「そういうことがあったんだ…」
　そう思って凛ちゃんを見る。この前から見ていて、あまり動きに怪我のあとのような雰囲気は見られなかったが、そう聞くとちょっと意識してしまう。
　後半戦開始のホイッスルが鳴る。
　沙羅ちゃんのジャンプボールのあと、作戦通り天音ちゃんがボールを奪い、柚希ちゃんが前線に走ってパスを受け、さらにゴール前に走った天音ちゃんにパスして後半の最初の得点になった。
　そして、その反攻で、凛ちゃんがドリブルで進む。僕は止められる位置だったが、さっきの話がよぎってちょっと出遅れる。

「こっちだー！」
僕をカバーするような動きで海里ちゃんが凛ちゃんのボールをカットする。

「おっ」
「え」
そのとき、ふたりが交錯するような感じになる。
ボールは弾かれてサイドラインを割った。
凛ちゃんと海里ちゃんは転倒するが、どちらにも怪我はなくすぐに立ち上がる。