学園ご意見所X 96
「はい♪」
「わあぁ、可愛い」
桜庭先生がスマホで愛娘の写真を見せてくれた。
「上の娘は栞で4歳。下の娘は奏で3歳です」
「へぇ、で、この子たちのお父さん…つまり先生の旦那さんというのは」
「今は海外にいます」
ニコニコ笑みを崩さず言う桜庭先生。
「この子たちは愛華さんと霧香さんに似てるって言うんでしょうか、実にヤンチャな子なんです」
「このくらいの歳ならそうでしょう、きっと」
そう話す桜庭先生の表情がお母さんになっていた。
「いずれ彼には愛華さんと霧香さんにも種を貰おうと思ってましたが・・・必要無いようですね」
ニコニコして言うが、それは私と翼が同じ男と子供を作りたいと言うのと意味合いが違う気がする。
霧香センパイが言っていたみたいな遺伝子だけ欲しがっていると言った印象だ。
「愛華さんや霧香さんには、私が出来ない恋愛をして欲しいですわ」
「先生・・・」
いつもニコニコしているが、背負っているものはとても大きいのだろう。
でも、桜庭先生も幸せになっていい筈だ。
「先生っ!・・・後継者を残すって言うお勤めが終わったんだったら・・・恋してもいいんじゃないでしょうかっ!」
私の言葉にキョトンとした桜庭先生だったけど、やがてクスクスと笑みを漏らした。
「やはり、西浜さんはいいですね・・・愛華さんも変わる筈だわ!」
そう言って悪戯っ子のような笑みを見せた。
「じゃあ、倉本くんと恋しましょうか?」
「ふへっ?!」
うわぁん、それ言っちゃやだー。
私が潤くんにメロメロにされてるの知っててそう言う桜庭先生。
「むー、桜庭先生意地悪ですー」
「西浜さんがそう言うんですもの」
まあでも、潤くんがみんなから愛されてる証拠かな、なんて思うといい気分になるものである。
「…………あれ、噂をすれば潤くん…んん!?」
潤くんからメールが来た。ただそれは、明らかにおかしい。
『たすけて』
「潤くん!?」
その時、部室のドアが乱暴に開けられる。
「大変だヒナ!潤ちゃん連れてかれた!!」
「クロちゃん!?」
「白木さんが無理矢理腕引いて…」
「ノナちゃん…それマジ!?」
私よりか弱い潤くんだ。
はっきり言って抵抗もできないだろう。
私はSNSで緊急メッセージを全員に送る。
感のいい人達だから、きっと上手く動いてくれるだろう。
「白木さんはどこへ?」
「校舎の別棟の方に!」
私が立ち上がると桜庭先生も心配そうにするが、私は笑ってみせる。
「生徒の揉め事は生徒同士で解決が基本です・・・もしもの場合は宜しくお願いします」
「分かりましたわ・・・お気をつけて」
きっと桜庭先生は上手くやってくれるだろうけど、これで桜花グループと白馬建設の代理戦争を学校でやるとかは勘弁願いたい。
私はそこから別棟の方に向かったのだ。
別棟に入った所。
そこに大前さんと栗林さん達同じクラスの生徒数人が居た。
「西浜さん、1人で来てくれるかしら?」
「ええ・・・」
クロちゃんとノナちゃんにセンパイ達を離れて待つように言って私は1人で入る。
案内されたのは科学室。
そこに白木さんとクラスの数人の女子がいた。
「倉本くんは?」
「準備室の方よ・・・後で合わせて上げる」
何時もより冷たい感じの白木さんの声。
私を見る目は憎悪・・・
恨まれる筋合いなんて私には無い。
「ここで裸になって」
短い一言。
まるで虐めの典型だ。
しかも逆らえない状態でやるんだから悪辣ですらある。
私は黙って制服を脱ぐ。
下着姿になっても全部脱げと白木さんは睨む。
その言葉通り裸になった。
「母子家庭のナマポの分際で・・・いやらしい身体をして・・・」
そんな事言われてもなんなのさと言いたくなるし、うちは生活保護貰っていない。
「まぁ、学費を身体で稼いでると言うし、それにふさわしい身体よね!」
小馬鹿にするような顔をするが、何だろうそんなに恐怖は感じていない。
「褒めて貰えて嬉しいわ」
なんて皮肉が出てしまう。
それに苛立った白木さんが私に近づき胸を鷲掴み。
しかも力一杯だ。
「痛いっ!」
「馬鹿にしてっ!・・・底辺なら底辺らしくっ、這いつくばって生きなさいっ!」
まあ、勝手な言い分だ。
そもそも白木さんと関わってないのに、これは八つ当たりだろう。
「こんなの持ってきたから入れてみようよ」
1人の女子が持ってるのは金属バット。
いや、それはやめてほしい。
太い細いじゃなく綺麗じゃない。