学園ご意見所X 88
「勿論、三笠くんにも覚悟してもらわないといけないわ」
「はい、僕は何でもします!」
三笠くんの答えに満足そうな笑みを浮かべた愛華センパイ。
まぁ、こう言う顔をしてる愛華センパイは大概良からぬ事を考えている時なので、色々と不安がよぎる私だった。
そして、数日後の朝・・・
それは起こった。
「戸松先輩っ!僕と付き合ってくださいっ!!!
登校する生徒でごった返す下駄箱前で、三笠くんが愛華センパイにいきなりの告白。
「ええ、三笠くんなら喜んで!」
ニッコリ手を取る愛華センパイ。
美少年と美少女のカップル誕生に周囲がどよめく。
「・・・演技なんですかね?」
「こう言うのを本気でやるのがマナだわ・・・まぁ、噂になるようにわざわざここって言うのがあざといけど」
私の隣には梓センパイ。
当然これがあると知ってるメンバーだ。
「2つのクラブは少し目が余りますからね・・・お灸を据えるのも必要でしょう」
そう言ったのは梓センパイに付き添ってきた三年生。
小松台高校生徒会長、新堂真由美先輩だ。
表向きは真面目な優等生の梓センパイが生徒会に所属してるから、2人が一緒に居るのはおかしい事で無い。
そして生徒会長がこの場面に居るのは、愛華センパイが生徒会と話をつけたと言う事だ。
愛華センパイはやるとなったら徹底的な人なので、各文化部や陸上部やテニス部、そして生徒会に話をつけている。
それだけでなく、教師達にも根回ししてるそうだ。
つまり、負けるような戦いはしないと言う事らしい。
「愛華センパイが生徒会が予算をくれないって嘆いてたのに・・・まさか協力して頂けるなんて・・・」
「それとこれは別なのですよ、西浜さん」
丁寧な物腰のお嬢様って感じの新堂先輩。
この人が生徒会長なのも物腰見てるだけで納得。
「さて、戸松さんのお手並拝見ですね」
「あー、多分普通にイチャイチャするだけと思うけどね」
少し楽しそうな新堂先輩とやや呆れ気味の梓センパイ。
ちょっと私も更なる混乱を呼ぶようでパニックではある。
朝一にそんな衝撃的な出来事(まあ茶番だが)が起こったその日はどうなるか、と思ったが、意外にも?放課後まで目立った問題は起こらずに過ぎて行った。
天敵が実の弟の彼氏になった三笠姉はそりゃ動揺しただろうが言い返すにも何も言い返せないはず。それはバスケ部の面々も同じだ。
「とりあえずよかったと思います」
三笠くん本人は納得いってる様子。
「本当に良かったよねぇ、遼くぅーん」
甘く蕩けるような声。
よくこんな声が出せるものだと感心してしまう私。
三笠くんも少し引いてるし。
勿論、その声の主は愛華センパイである。
「本気で私をオトす気でこないと成功しないわよ」
「は、はい・・・でも・・・」
「でももだってもじゃない!やるかやらないかよ!」
やる時はとことんと言う愛華センパイらしい。
演技じゃなく本気。
愛華センパイはそう言う人だ。
「君が本気で挑まないと何も変わらないわよ」
「・・・分かりました」
それでいいとニッコリ笑う愛華センパイ。
三笠くんも覚悟を決めたように愛華センパイを抱きしめるとキスをする。
その辺りは手慣れていて、この子もいいヤリチン君の素養があると思えた。
「じゃあ、潤くん、ヒナちゃん、翼ちゃん・・・私は遼くんとイチャイチャしてるから後は宜しくね」
「うん、後は彼女達を煽っていけばいいのかな?」
「そうね・・・噂はバンバンばら撒いてくれていいわ」
あとは私がしっかりたっぷり楽しむから、という愛華センパイと三笠くんを残し、私たちは校内を巡った。この噂をバレー部バスケ部の連中はどう受け止め、どんな思いをし、どう行動してくるのか。今の私には予測不可能だった。
「ちょっと翼と潤くんに任せていいかな?こころ先生のとこ行くわ」
「オッケー、ゆっくりしておいで」
「あとは任せておいて」
そう言われたので私はカウンセリングルームへ。
「ヒナちゃんいらっしゃい♪」
「あ、いましたね。今日もお願いしますミルクマスター」
「誰がミルクマスターやねん」
とか言いつつノリノリなのが友梨奈センパイ。
机の上に何かチラシのようなものが乗っていたので目を通す。
『ゲーム部始動!部員募集中』
「ゲーム部って、そんな部活できるんですか」
「最近話題のeスポーツって奴だよね。瀬田さんゲーム大好きだもんね」
アーケードも家庭用機もスマホも何でも来いなゲーマー友梨奈センパイ。
ただし課金はやめなさいと周囲の関係者は全力で止めている。もちろん私もだ。