学園ご意見所X 87
自分が白木さんにいいように思われたい、そういう人間が増えていって自然と私のいるクラスは白木さん…いや白馬建設側の色が濃くなっていったということか。つくづく私は運のない女だと思わされる。
「西浜さんは今のまんまで問題ないからね」
「もちろんです。今更寝返ってどうするんですか」
愛華センパイにあんなに可愛がってもらってるのに。
「西浜さんは私が全力をあげてお守りいたしますわ、何かあったら些細なことでもご相談ください。揉め事になったら即解決いたしますので」
天使のスマイルでなんかすげえこと言ってる桜庭先生。涼しげな瞳にメラメラと炎が宿っているように感じた。
白木さんやクラスの雰囲気に馴染めなくとも、少なくとも現状は困っていない。
とりあえずそんな困った事にならないだろうと、私は気楽に考えていたのである。
考えていたのではあるが・・・
次の日。
「ど、どどどど、どーしますセンパイッ!」
「落ち着きなさいヒナ」
「来てしまった以上、関わるしか無いでしょ」
焦る私をなだめる翼と、少しため息混じりの潤くん。
ここは諜報部の部室。
私達3人の視線は腕組みして窓の外を見る愛華センパイに注がれていた。
「素晴らしいじゃない!」
その格好のままニンマリと笑う愛華センパイ。
超絶嫌な予感しかしない笑顔・・・
ああ、これは無事で済まないと了解してしまう。
この騒動を持ち込んで来たのは、この諜報部の来客。
その来客とは・・・
三笠くんだった。
用件は、バレー部とバスケ部から匿って欲しいと言うものだった。
潤くんに負けず劣らずの爽やかな笑顔がチャームポイントな三笠くんだが、今はその表情も曇り気味。どうやら相当お疲れの様子である。
「ワガママかもしれませんが、相談できるとしたらここしかないと思いまして」
「なんとなくわかるかな」
翼が言う。
因みにバレー部バスケ部双方がこの部室に乗り込んでくるのを恐れ、一応中からカギはしてある。
「お姉さんとの関係はどうなのかしら」
愛華センパイが三笠くんに尋ねる。
「皆さんが考えるほど、悪くはないんです。これは本当なんです」
必死な顔をしているから三笠くんの姉への想いは分かる。
「ただ、みんなどんどんエスカレートしていって・・・とうとう赤ちゃんを作りたいって言い出して・・・」
「あーっ・・・行く所まで行っちゃったかぁ・・・」
まぁ、確かにエスカレートし過ぎだ。
高校生が子作りとか、これは行き過ぎだろう。
「純朴な生徒が多い割に、妙な所で性に対しておおらかな所があるのよねぇ小松台って・・・毎年妊娠して卒業する女子とか学生結婚とか無い事は無いから」
うちの地元の高校はクラス全員ヤリチンヤリマンとか妊娠中退とかあるって聞いた事があるけど、こっちはそう言うの黙認なのかと驚いてしまう。
まあ、多分お腹の大きい先輩がウロウロしてるのを見た事が無いからレアケースだろうとは思う。
「赤ちゃんは道具じゃないからね・・・高校生だとか関係無く」
ちょっと怒った感じの潤くん。
こう言う所は真面目さんだ。
「そこまでエスカレートするなら何とか手を打ってあげないとね」
愛華センパイはどこか楽しそうで、それがちょっと不安になる。
この顔で三笠くんのお姉さんを手のひらで転がして弄んでいるのだ。弟と違って冗談のわからないお姉さんはそれにマジギレする。シリアスというよりギャグみたいな空気だ。
「でもセンパイ、いったい何をするんですか?」
「旅に出ます。探さないでください。とかって三笠くんが書き置きしてしばらくお休みするとか」
翼さん、それはどうなのか。