学園ご意見所X 63
桜庭先生はどこからどう見ても正統派のお嬢様と言った感じの美人先生。
丁度こころ先生とアンリ先生の間の年代の若手先生だ。
本当に物腰が上品で清楚、かつプライベートはミステリアス。
男子生徒からは絶大な人気がある。
「私達と正反対のタイプだから、あんまり会話が成り立たないのよねえ」
遥先生の言葉にこころ先生がうんうんと頷く。
「先生同士って言っても仕事の会話しか無い先生も多いしねぇ・・・あ、谷野先生とは最近よく喋るようになったけどね!」
こころ先生がそんな話をするから少しあの事が気になる。
「あれから菊沢先生と上手くいってるんですかねぇ?」
「それはもう、上手く行き過ぎみたいね」
遥先生がスマホの画面を見せてくれる。
そこには菊沢先生を中心に全裸の女の子達。
菊沢先生の背中からミク先生と谷野先生が抱きつき、左右にはミク先生の双子ちゃん。
そしてその前には生徒達が並ぶ。
みんな満面の笑みでピースしているところを見ると、どうやら上手くいっているようだ。
「これは完全にハーレムの主ね」
「谷野先生もこんなにいい顔するんだ。可愛いじゃん」
「これ、誰が正妻なんだろ…」
「たぶんミクちゃんだね」
みんな幸せそうなその一枚を見て口々に感想を言う。なんにせよいい形で進んでいるのはいいことだと思う。
さて。
「ハルちゃん、こころん、次に注目」
「…いつからなれなれしくなったよ」
愛華センパイが遥先生の持ってる競馬新聞をじーっと眺めていて、何かを見つけたようだ。
「次のレースの3番、ウララグラントって馬、馬主の名前が桜庭周五郎ってなってるでしょ、これが麗ちゃんのお祖父ちゃんだよ」
「あれ?桜庭周五郎って、なんか別んとこで名前聞いたような…」
霧香センパイが顎に手を当てて考える。
「小松台の大地主にして桜花開発興業の総帥よ」
「ああ、あのおっさんか!」
愛華センパイが言う事に霧香センパイがポンと手を叩いて納得した顔。
「まっ傘下に数々の企業を従える一大グループのトップね・・・小松台周辺の学校とかも多額の寄付を受けてるから、地元では知らない人が少ないんじゃないかな?」
「凄い人が桜庭先生のお爺さんなのですねぇ」
まあ私とすれば凄いって感想しか湧かない。
「因みに正妻他、無数のお妾さんを抱える性豪でもあって・・・その中には大桑和歌子と言う人がいてね」
愛華センパイが言う人は流石に知らない。
でも愛華センパイは意味ありげに笑う。
「その息子は大桑和正って言うの」
「ちょっ?!」
それって、つまり・・・
あの地下室に監禁されてる元用務員のおじさんが、そんな有力者の子供だって事・・・
「成る程な、それでか」
霧香センパイ・・・
何も知らずにいたんですか・・・
「まっ、オレは愛華のやる事が理解できんでも付いていくだけだが・・・」
そう言う霧香センパイが目を細めて聞く。
「目的は復讐かい?」
「まさかそこまで子供じゃないわよ・・・大人の事情を分かった上で振る舞う事ぐらいはできるわ」
あそこで定期的におじさんとセックスする事が愛華センパイの言う大人の事情って奴と言う事みたい。
「まあ、今回は学校内の投書とかじゃなく、その桜庭のお爺様からの頼まれ事にみんなを巻き込ませて貰ったのよ」
「成る程、理由は分からんが愛華がそう言うならいい」
納得が早すぎる霧香センパイ。
いや、ここは色々聞く所でしょうと突っ込みたくなる。
「それは何か、桜庭先生が怪しげな事をしているとかですか?」
「んと、そうじゃなくて超箱入り娘に育て過ぎて浮世離れが太陽系を遥かに超えていると言うのが理由の1つ」
愛華センパイがそう言うけど、逆に私達も世間からかなり外れたビッチ・・・
いくらなんでも住む世界が違いすぎると思う。
「とは言っても・・・元用務員の件からして納得いってないんだけどねぇ」
こころ先生がボヤくように言う。
それは私も同じだ。
元用務員は小松台高校の野球部を甲子園に導き準優勝という成績を残し歴史を作った功労者。そしてプロにもなった。
相次ぐ故障でプロでは大成できなかったが地域を牛耳る一族の血をひくものとしてコネで用務員になったのだろう。それで野放しにしていたから…
「そのことはいったん忘れてね」
愛華センパイが言う。
「しかしこのお祖父ちゃん、よっぽどの親バカならぬ孫バカだね…自分の所有する競走馬の冠名に孫娘の名前使ってんだもんな…」
遥先生がスマホを見ながら嘆息する。競馬のデータベースなるサイトがあって、そこから桜庭周五郎の持ち馬を調べていたようだ。