学園ご意見所X 60
「菊沢先生、この封筒に心当たりは?」
「全く分からないんだ・・・」
混乱している菊沢先生を見ながら愛華センパイがそう訊くが、菊沢先生は混乱するばかりだった。
「渡部先生から聞いたのは、この封筒が菊沢先生の机の辺りに落ちていたと」
「それってもしかして・・・誰かが置いたんじゃないの?」
愛華センパイの言葉に霧香センパイがそう言う。
「このデータを持ってるのは関係者・・・で、わざわざ人の目に触れる所に置いたのは、菊沢先生を窮地に陥らせる意味しか無いわよね?」
梓センパイが考え込みながら言う。
「ミクちゃんが誰にも言わず私に渡してくれて良かったのかもしれないわね・・・拾ったのが別の人なら・・・」
とんと自分の手刀で首の後ろを軽く叩く愛華センパイ。
先生や生徒複数と性行為がバレたら、首は間違い無いだろう。
でも、それならデータを流した子もタダでは済まない気がする。
「実は、この封筒の出所・・・既に調べてあるんだけど」
全員が注目する中でそう言ったのは翼だった。
私も知らないからビックリして翼を見る。
「特徴的な封筒だから愛華センパイから調べて頂戴って言われてたの・・・それでこの封筒・・・この学校でこの封筒を使ってるのは10人程度で・・・その使用者の中に谷野恵子先生がいるの」
私も更にビックリしたが、菊沢先生ももっとビックリしていた。
何故谷野先生がそんな事を・・・
意味が分からなくて混乱してしまう。
「菊沢先生を独り占めしたかったのかもね」
こころ先生がポツリとそう言う。
カウンセラーだからこその分析だろうか?・・・
「あー、なら納得できるわ」
遥先生も続いて言う。
「まぁ、本人から聞かないと理由は分からないわね」
そう言った愛華センパイの横でジュースを飲んでいた霧香センパイが一言。
「本人呼んでみたから」
えっと全員が霧香センパイに注目するが、霧香センパイは平然と付け加える。
「ここの場所とパーティの写真も送っておいたから、谷野先生飛んでくるんじゃないかな」
ホントに勘がいいというか、意思疎通がうまく出来てるというか、愛華センパイと霧香センパイは最強である。そんなセンパイからの依頼をしっかりこなす翼…私よりも有能過ぎる。愛華センパイの正妻ポジションを取られそうだな…
こころ先生が尋ねる。
「谷野先生ともヤったんですよね?」
「ええ…」
「もしかしたら谷野先生は本気なのかも」
こころ先生の言葉に菊沢先生の表情が変わる。
「僕もっ、谷野先生を本気で愛してますっ!」
「他の女の子達は?」
「勿論、全員本気ですっ!」
力を込めてそう言う菊沢先生。
イケメンマッチョな体育教師らしい熱さが微笑ましくて、私は少し笑みを漏らしてしまった。
それは私だけでなく、ここのみんなが同じ反応だった。
「経験薄いけど、立派なヤリチンよね」
「そうね、イケメンでもあるわ」
「谷野先生が本気になる訳が分かるし、多分他の子もそうじゃないかな」
口々に出る反応は私もごもっともな所。
ここにいる全員が菊沢先生に好意的になった。
「でも、全然ヤリ足らなくて・・・だけど、谷野先生が壊れちゃいそうで・・・」
「あー、加減したのが悪い方に出たのね」
根本的に性欲が桁外れなんだろう。
桁外れで一人二人じゃ満足できないのに気遣いできるから、それで谷野先生もやられちゃったのかもしれない。
「じゃあ、渡部先生とかにアプローチしてみるのはどうかな?・・・彼女、体力は折り紙つきよ」
「素敵な人です・・・お相手して貰えるなら最高です」
菊沢先生、自信を持ってそう答えた。顔は綻んでいる。
ヤリチンだけどどこか憎めなくて嫌悪感がないのは、中学の頃のイケメン先生と重ねてみてるからだろう。なんだか懐かしくなってきた。
「渡部先生、元陸上部でね、駅伝とか走ってたのよ」
「僕も陸上部だったんで、気が合うなら。まあ、短距離でしたけど」
「ミクちゃん、双子のママだからねー。梨花ちゃんと萌花ちゃんっていう小6の可愛い娘ちゃんがいるんだ」
愛華センパイがミク先生の娘さんの写真を菊沢先生に見せた。
むー…ホントに小学生なのかこの子たち。
絶対私より背が高い。