学園ご意見所X 50
「でも・・・才能とか言われても全然分からないです・・・蓮さんとの違いも」
私の投げかけた疑問。
梓センパイはそうねーと言って少し考えてこう切り出した。
「蓮さんのAV見たけど、演技なのよ・・・一生懸命演技してるの」
「演技ですか?・・・女優さんは大なり小なりしてるんでは?」
AVでは様々なシチュエーションのものがある。
当然、女優さんはそれに沿って演技してる筈だ。
「勿論演技もしてるけど、一流どころはそれが自然よね・・・ただ一番の違いは・・・」
そこで言葉を止めて、梓センパイは次の言葉を探す。
「私ね、自分はオトコとヤル為に生まれてきて生きてると思ってる・・・セックスが生きがいだわ」
黒ギャルビッチ時代がある梓センパイだからの言葉だろうか。
「それは今でも変わらないし、セックスしてる時の自分が一番輝いていて、一番幸せな顔してると思っているわ」
そんな風に言いながら笑う梓センパイが言葉を続ける。
「さっきのヒナちゃん見て確信したけど、ヒナちゃんはセックスで輝いていて、心から幸せを感じているように見えたの・・・本心からセックスが好きなんだなって」
それは・・・
少し微妙な気分になるが、確かにそうかもしれない。
ミノルさんのセックスは本当に良かったし、幸せを感じれた。
潤くんの時もそう。
私はあのレイプを除けば、全て満足感や幸福感をセックスで得ていた気がする。
「それが才能だと?・・・」
「心からセックスが好きで楽しんでるから、見る人に伝わるんじゃないかな?・・・それは演技では越えられない壁だと思うの」
何となく梓センパイの言う事が分かってきた。
自覚はあったけど私・・・
やっぱりスキモノだったんだ。
うん、凄く微妙な気持ちだ。
「私としては同志が増えた気分ね・・・声を大にして言えるわ、ビッチな世界にようこそって!」
「なんですかそれ!」
そう言って抱きしめてきた梓センパイと私は笑い合う。
同志と言われたからではないが、何か梓センパイに近付いた気がしてきた。
自分がビッチだって前々から薄々感じてた。それが噂であらぬところまで広がってクラスで浮いてるからすべてを肯定する気になれなかった。
でも、その気持ちはちょっと変わりつつあるかもしれない。
そう言うところもすべてひっくるめて私なんだと。そんな私を支えて可愛がってくれる人がいるんだから今が幸せなんだと思う。
翌日―夕暮れの太陽の光が差し込む部室には愛華センパイと2人きり。
翼だったり四天王のセンパイだったり先生だったりがいるにぎやかな空間も好きだけど、愛華センパイと2人でいる空間も、もちろん大好きだ。
「いろいろ、知らなかった話が出てくるものね」
愛華センパイが一つのファイルを開いて私に見せる。
「これからヒナちゃんに教えるのは、あのおじさんのちょっと悲しいお話」
愛華センパイがファイルを1ページめくり、私に見せる。
過去の新聞記事がスクラップされまとめられていた。
まず最初に目に留まったのは、今から28年前の日付のスポーツ新聞の記事。
『小松台 7年ぶりの夏切符つかむ』
この年、私たちが今通う高校は夏の甲子園に出場した。
最近は強豪私立校の陰に隠れてはいるが今でも「公立の雄」と呼ばれるポジションにはあるらしい。
大きく写真に写るのはマウンド上でガッツポーズするエース投手。
当時の背番号1―大桑和正。実はこの人こそ、私を襲ったあの用務員だった。