生徒会日和~Second Season~ 82
しばらく意識を失っていた早紀さんが、ちょっとした後ふと口を開いた。
「すごかった」
「気持ちよかったです」
「ありがと…これで、また一年やっていけるかな」
「どういうモチベーションのあげ方ですか」
「樹くんがなっても、梓ちゃんがなっても、私がやることはただ一つ。どんな時もしっかりサポートしていく。だから、よろしくね」
「はい。ありがたいです」
お互い向き合い抱き合って、唇を重ねた。
それから、お互いにベッドの上で過ごし、一瞬寝てしまったりしながら過ごし、気がついたら休憩終了30分前くらいになった。僕たちはまた一緒にシャワーを浴びて汗を流し、また何回かキスをして部屋を出た。
もう、日は沈んでいた。僕たちは途中まで同じ電車に乗って帰った。
生徒会選挙もそうだが、僕にはもう一つ決心しないといけないことがあった。
すっかり暗くなったころに家に着いた。母さんからは帰宅中の電車の中で『今日は仕事で帰りが遅くなる』というメールが来ていた。むしろその方がよかったかもしれない。
僕は家の門から中には入らず、庭の隅にある物置に足を運んだ。
物置の扉を開け、スマホのライトを使いながら一つの段ボール箱を開けた。
「これだ」
段ボール箱の中には、もう何年使ってないだろう、野球のグローブが入っている。
グローブ、そしてボール。
僕は何年かぶりにグローブをはめてみて、ボールをその中に入れた。そして、右手でまたボールを取り出し、何回か、グローブへと放り込んでみた。
「樹、どうしたのこんなところで」
ここで、あまり聞きたくなかった声が聞こえた。
声の主はこちらの気持ちとは無関係に近づいてきた。
「野球、また始めるの?」
「姉さん…」
穂積渚。
僕の姉であり、剣道の道を勧めたその人である。
大学進学から家から離れて以来、姉さんがどこで何をしているのかは全くわからなかったのだが。
「野球部の部員が少なくて、助っ人を頼まれたんだ」
「へえ、そうなの」
「ところで姉さん、なんで…」
「お母さんには長い休み取れたから帰るねってメールしたんだけど、相変わらず仕事忙しいのね……」
あの頃と少し違う姉さんがいた。