生徒会日和~Second Season~ 9
実はここで早紀さんに相談したのも、澪さんの生徒会室での言葉があったから、選挙の時まで梓さんと早紀さんの両方となるべく接していて、どんなことを考えているのか知った方がいいだろうと思ったからというのもある。
「自分の言葉で話せばいいじゃない、っていう答えを求めてるんじゃないんだよね」
僕の思いとは別に、早紀さんは僕の相談に応え始める。
「樹くんは、一年間学校生活を送ってきて、どんなことを感じたかな?そういうところから切り出したらいいんじゃない?」
「そうですね。そうすることにします」
この一年はいい出来事ばかりだったと思う。初年度に入学した男子としては初めてできる下級生たちにいいイメージを持ってもらいたい気持ちもあるし。
「早紀さんには今年もいろいろ頼りにしてもらうかもしれませんね」
「ふふ、頼りにしてるのは私の方かも。でも、正直会長は梓ちゃんに任せたいんだよね……」
「いっそ樹くんが選ばれてくれたら、こんなことで悩まなくて済むのになぁ…」
「まさかそんな…」
「でもさ、今朝の校内新聞見た?私と梓ちゃんに次ぐ三位に樹くんが付いてたよ?」
さすがに僕が当選する確率はかなり低いと思う。早紀さんか梓さんだろう。
でも…もしかすると…というのもある。
早紀さんや梓さんに投票したい人ばかりではないし、単にどっちも好きでないからと別の選択肢を求める人だっているだろう。
さっきも教室で、蜜恵さん達−−−−どうしたことか、昨年度は隣のクラスだった蜜恵さんとも一緒のクラスになった−−−−の話をふと聞いてしまった。
−−−−−−−−
「会長選挙、誰が当選すると思う?」
「うーん…私は一宮さんかな」
「曽根さんの方がいい学校にしてくれそうだと思うよ?」
「でも…やっぱり会長だと助っ人に来てくれないんじゃない?だから一宮さんに投票する人が多いと思うんだけど?」
「蜜恵?どしたの?黙っちゃって」
「岡崎さんはどう思ってるのよ。一宮さん?曽根さん?」
その時、僕も蜜恵さんと視線が合ってしまった。
どこか気まずそうに、それ以上に恥ずかしそうに蜜恵さんが言ったのは。
「私は…その……穂積くんがいいかなって…」
「え?!ひょっとしてまだ諦めてないの?」
「えっ!違うけど、でも彼もいいかなって思うの。しっかりしてるし格好いいし」
「本当に彼の事諦めたの?」
「ほ、本当よっ。支持してるのと恋してるのは…別だから」
「そっかぁ…そういう選択もありかぁ…千沙も穂積くん支持だって言ってたし、案外ありかも?」
−−−−−−−−
その後は完全に恋バナになっちゃって、蜜恵さんが他の女子から冷やかし半分の追及を受け続けて大変そうだった。
「すると、新一年生向けの選挙説明も工夫が要りますね…昨日まで、完全に第三者的に説明するつもりだったんです」
「そういえば、入学式で挨拶して、選挙を説明した人が、生徒会長になること、今までは多かったみたいなんだ」
「ほんとですか?!」
「一年生、上級生の名前なんて最初わからないでしょう。だから、選挙説明のときに聞いた名前を書く人が多くなる」