生徒会日和~Second Season~ 75
店を出て、早紀さんは、以前菜摘さんと行ったショッピングモール、そしてその後歩いた河原の方向へ歩き始めた。あの駅は隣の駅で、歩ける距離にある。
黙々と前を歩く早紀さん、僕は何か話そうと考えた。
「早紀さん、」
その背中はなんだか哀愁が漂って見えた。
優秀なお姉さんがいて、信頼できるクラスメートがいて、その陰でいつもついでのような扱いを受けた……早紀さんは以前そんなことを言っていたような気がした。僕としては、まったくそんなことは思わない。むしろ僕には早紀さんが必要なのだ。
「どうしたの、樹くん」
「えっと、どこに向かおうと…」
なんとなくだが、行く場所は思い浮かぶ。なぜ早紀さんがそこに行きたいのか。
「樹くんを励ましてあげたい………それと同時に、私も………」
早紀さんと僕は河原に着いた。早紀さんは、高速道路のインターチェンジに向かって川沿いの道を歩き続ける。
僕は早紀さんの後ろを歩き続ける。
やがて、僕たちはインターチェンジ近くへ、いくつかのラブホテルがある場所にたどり着いた。
「早紀さん」
ラブホ群を前にした歩道で立ち止まった早紀さんに背後から声をかけた。
「樹くん、覚悟、決めたよ」
短いけど、強い言葉が返ってきた。
その背中から哀愁が消えつつあると感じた。
「僕はついていきますよ」
「むしろ引っ張ってくれたら嬉しいんだけどな」
早紀さんに本来の笑顔が戻った気がした。
早紀さんが腕を絡めてきて、僕らは2人並んでホテルの入り口に向かって歩いた。
入ったところはこの前菜摘さんと来たところとは違った。しかし、仕組みは大体同じだったので、僕は戸惑うことなく、早紀さんを部屋へと案内した。
早紀さんは部屋に入ってベッドの縁に腰掛けて、周りを見回した。