生徒会日和~Second Season~ 29
「あ、穂積くん、ちょっと」
少し離れたところにいた長山さんが引き止めた。
「えっ?」
「行徳の話題の選手、少なくとも水瀬は出そう」
「何で?」
「去年のデータをしらべたんだ。水瀬はどんな弱小校との試合も全部出てる。多分それも練習って位置づけてるんじゃないかな。あと、今怪我してるとかそういう情報もない」
「そうなのか。ありがとう」
どうやら対決は免れそうにない、ということだろう。
「私からも…穂積くんに、野球部に協力してもらえたら、嬉しいかな」
「うん、考えとくよ」
ますます断り辛くなってきた。
いや、今まで勧誘してきた人たちからしたら僕が協力しなかったらツッコミを受けるのは明らかだろう。
学校を離れ1人帰宅の途につく。
そんなところにスマホがメッセージの受信を知らせる。
「…歩さん」
「おつかれ。樹は、最近どう?」
いつもは、元気?とかの挨拶はあったけど、自身の近況報告が多かった。だから、こっちからなにか話す機会があまりなかった。
僕は反射的に返信した。
「電話していいですか?」
直ちにOKを表すスタンプが送られてきた。
すぐさま電話をかける。歩さんと会話するのは久しぶりだ。自然と心が高ぶってくる。
「もしもし樹、久しぶりー」
「うん、こっちこそ、久しぶり」
「樹が忙しいだろうと思って、なかなか連絡とりづらかった。ごめんね」
「いや、僕は別に大丈夫だから、いつでもよかったのに」
電話の向こうの歩さんは変わらず明るく元気な愛しい彼女だ。
「暫定会長だと、いろいろ仕事があって大変でしょ」
「うん、でもまあ、それは何とかなってる。剣道部とか、野球部にも顔を出せてるし」
僕は、これまで断片的にしか伝えていなかった剣道部とか野球部でのこと…もちろん、誰と深く関係した、とかは抜いて…を話した。
「そうなんだ。樹は、野球、自分で試合出たいと思うの?」