子作り実験校 3
顧問は、ちらっと滝川の方を見た。
「そう。確かに、寮自治会の役員にも秘密保持契約をすればいいが、いたずらに秘密保持の範囲を広げるのは、適切ではないと考える……」
顧問は、しばらく沈黙した。
「…こう、持っていく『学校側が、不純異性交遊禁止は、時代に合わないから解除しようと考えていて、寮の異性立ち入り禁止も、寮生で議論してもらう、ということにした』…そのあとは、さっき言ったままのことを言っても、おかしくはなかろう」
英雄は、それは微妙だ、と思った。しかし、不純異性交遊禁止の違反で毎年何人かの生徒が退学処分になっていること、それはバレた数というだけで、実際はもっと行われているかも知れない、ということは認識していた。そう思うと、ある程度説得力も、あるのかも知れない。
少し間をおいて、滝川が、口を開いた。
「あの、こちらの案件には、賛成して、ご協力頂けるのでしょうか?」
顧問が応える。
「滝川さん、申し訳ありません。かなり、前向きには、考えているのですが、ちょっと、内部的 整合が、必要です…1週間、待って頂けませんか?」
滝川はにっこり笑った。
「ええ、十分、議論してください。この実験がうまくいば、全国に展開する、モデルケースとなるのですから、ぜひ、皆さんのご理解を得て、よりよい形で、すすめたいです」
そう言って、滝川は帰り支度を始めた。
「あのー、じゃあ、エンコーとか、やっちゃっていいのぉ?」
今まで口を開かなかった、書記の室井美由紀が、口を開いた。
「室井さん、それ、条例違反」
浩かぼそぼそと言う。しかし、滝川はこう言った。
「条例では、18歳未満とのみだらな行為が規制されているのですが、例えば結婚を前提としたような、真摯な行為は、規制されていません。そこで、我々は、皆さんがこの実験に参加するなら『この高校の生徒は真摯に少子化対策に取り組んでいる』と、県警に根回しする予定です」