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子作り実験校
官能リレー小説 - 学園物

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子作り実験校 1

「…というわけで、皆さんにお子さんが生まれたときには、庁挙げて、全力で支援しよう、というお話なんです」

 と言って、この役人…役人にはあまり見えない。新任の講師だ、と言っても差支えないような風貌の男は、いったん話を切った。

 聞いている6人の生徒は、何のことかわからなかった。

 新設される「少子化対策庁」の一般的な政策を聞いたあとの、そのセリフ。少子化対策なら、それは当然なのではないか…と一同、一旦は、思った。
 しかし、わざわざこの片田舎に役人が来て、しかも秘密保持のサインまでして(このサインをすると、その人は公務員に準ずる存在となって、特定の秘密事項を漏らすと罰せられる)
聞いた話がそんな一般的な話のはずはない。

 そう思った生徒会副会長 兼 男子寮自治会長 太田英雄 は、このように、切り出した。

「あの、それは、高校生の、私たちに、子供ができたとき、っていう、ことですか?」

「その通りです」

 役人は、一旦言葉を切った。

「お子さんができたら、三百万円、お手元に残るようにします」
 一同、息をのむ。

 太田英雄は、以前別の高校にいた。
 つまらないことで停学処分になりそうになった。本人は何も間違ったことはしていないつもりで、堂々と処分を受けるつもりだった。
 しかし、世間体を気にした親が、処分が下る前に勝手に自主退学にしてしまった。

 かなりむっとした彼は、親元を離れてこの高校で再起を期すことにした。
 この高校、過疎地にあり、もとは廃校寸前だった。
 ある政権の地方創生の流れに乗って、校舎のリノベーションと、近代的な男子寮、女子寮を備え、全国の親元から通えない人、通いたくない人、を広く集めて再生した。

 彼は転校して、何にでも意欲的に取り組んだ、が、まわりの全員が「意欲的」というわけでもない中、あれよあれよという間に、現在の生徒会副会長、男子寮自治会長 の役割が来て、彼は様々な問題に日々忙しく取り組んでいた。
 そんな中、生徒会顧問から「国の役人が来るから集まれ」という指示があって、生徒会役員5人と、風紀委員長の計6名が、集まっていた。
 英雄は、教育関係か、地方創生がらみの役人か、と思ったが、彼は「保健勤労省 少子化対策庁準備室 保健勤労事務官 滝川一樹」という名刺を配った。英雄は首をひねったし、他の生徒も少なからず怪訝な顔をした。

 そしてすぐに出てきた、秘密保持の文書には一同面食らった。
 「特定秘密ですか!何を、秘密にするんてすか?何が秘密かも、秘密なんですか!」
 もう一人の生徒会副会長、福島咲は、滝川に言葉をぶつけるが、滝川はあいまいに応えるだけだった。
 
 誰もペンをとらない中、入り口の近くのパイプ椅子に座っていた顧問が、口を開いた。
 「君たちにとって、悪い話ではないと思う。もし、話を聴いて、賛同できなければ、断るだけだし」

 この顧問、いつも、生徒の側に立って、親身に生徒会顧問を務めていた。この顧問がそう言うなら、考えてもいいか、と、一同考え始めた。
 
 そして、生徒会長が、風紀委員長とともに、ペンを持ち、無言で承諾のサインをした。他の4人も、続いた。

 そして、その「子供ができたら300万円」の話につながる説明が、始まったのだった。
そもそも少子化に至ったのは女性の社会進出が政府の想定を大きく超え、尚且つ若年層を取り巻く経済情勢の悪化期間が長かった事……もう一つは多趣味性社会で結婚観に幸せに感じられなくなった事が要因された。結婚しても高齢出産によるリスクは医療費増加、即ち増税にもなりかねない……そこで政府は極秘裏に進めた計画、その一つがコレである。

「まあ……バレたら国内外で論争になるが、国外に関してはキリスト教の宗教観で言っているもんだ……国内に対しては“文句があるのなら議員になれ”と言えばいい」
「ヒドッ」
「それが現実だよ、子育てを躊躇う理由に資金難もあるからね……その300万の内訳、半分以上は妊婦の検診や出産費用に宛がう事が条件だ」
「「「「?」」」」
「妊婦っていうのは色々と大変でね……日本だって出産は今でも命懸けだ」

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