風紀委員Girls! 942
意識を失った私を、身体も拭いてここまで運んできてくれたんだ…見た目に似合わず優しい男なのね…
伊織はそう思った。
彼とはこの一度きりにしよう。
舞にはもちろん内緒。
剛との愛をよりいっそう意識した、そんな気がした。
近所のコンビニで買い物をしていた舞。
そこで彼女はある光景を目撃する。
「あかり…だよね、アレ」
駐車場の奥の方、男に言い寄られているような姿の少女…あかりに違いない。
「間違いないはね…ナンパに合ってるのかしら?…」
美咲も舞の横に並び、店内からそんな二人を見詰める…
「でもあの男…ナンパするほど若くはなくない?…」
三つ揃えの細身のスーツをきっちりと着こなす男…ビジネスマンには違いないだろう…
「そうね、お父さんってほどの歳ではないけど……あかりってお兄ちゃんいたかしら?…」
「ああ…そういえば」
美咲が思い出したように言う。
「あかりのお母さんって、二、三年前に再婚したって聞いたことがある」
「その再婚相手があのお兄さんみたいな人…納得だね」
「うちの学校、複雑な家庭が多いな」
「夏織とか唯とか…桜は大丈夫なのかな」
「ほんと皆大変なんだ…学校ではそんな素振りは見せないけど、皆それぞれいろんな事情があるんだね…」
「うん…親は口うるさいけど、私たちみたいな普通の家庭に育った子は、ある意味親に感謝しなくちゃいけないのかもしれないはね…」
「舞の家は、ご両親仲はいいんでしょ?…」
「仲が良すぎて困っちゃうくらいだよ。一緒に買い物についていくと年甲斐もなくラブラブっぷり見せたりとかさ、こっちが恥ずかしくなるんだよ」
「微笑ましいねぇ」
「うーん…あと、予告もなしに2人で旅行に行っちゃうとかね」
「理想的だねぇ」
「んー、そうかなぁ?」
「うちってさ、お父さんとお母さんの歳が離れててさ、お父さん、あと数年で仕事定年なんだ。そのせいか知らないけど、飲み会とか食事会とか多くて、お母さんちょっと寂しそうでね…」