風紀委員Girls! 1
―私立清美(せいび)学園―
その名のとおり、『清く』『美しく』をモットーに掲げた女子高である。
清美学園はこの春、樹龍市に新たに誕生した。
地方都市に新しく生まれた私立校…一見普通のようにも思えるが、ここ樹龍市にとっては町のイメージを大きく変えるための一大プロジェクトだったのだ。
樹龍市は長年、高校同士の紛争に頭を悩ませていた。
公立私立問わず、問題児や不良の集まりやすい環境があったことが原因とされている。
そこで市は、ある私立の学校法人に学校設立を頼んだ。
他校の模範となり、ひいては抗争を収める役割を果たしてもらおうと願い…
こうして誕生したのが清美学園である。
「みんな、準備はいい?」
数十人の少女の中心に立つ女子生徒。
彼女こそ、清美学園初代生徒会長、天野舞。
「最近、黒獅子工業と青海大付属の間で不穏な噂が流れてる…両校の対立は日に日に悪化していて、このままでは衝突は避けられそうにないわ」
148cmという小柄で可憐なルックスとは裏腹に、強いリーダーシップとカリスマ性を買われて生徒会長に支持された舞。
舞の前に集まった女子生徒たちは校内、そして地域の安全・平和を守るために組織された『風紀委員』である。
黒獅子工業は伝統ある公立校だが、それに反して校風についてはいい話をまったく聞かない…長年にわたり市民の脅威となり続けた存在である。
一方の青海大付属は新進の私立校であり、どちらかというとクリーンなイメージの強い、進学率も高くエリート輩出に重きを置く高校。
…ちなみに、両方とも男子校である。
「どうして青海大付属が黒獅子と…今まで何の対立理由もなかったじゃない」
そう言うのは舞とは対照的に、背の高いモデル体型の美少女、草壁彩花。
清美学園の生徒会書記でもある。
「青海大付属も最近出来た私立の男子校…黒獅子にとっては縄張りを荒らされた感を深く持ってるみたいね」
舞の代わりに答えるのはショートボブの美少女、柳瀬美咲。
新聞部部長の美咲、表向きはそう名乗るが実際は諜報部隊である。
「いつ衝突してもおかしくない状況…それが今日かもしれないのよね」
「そういうこと」
頷く美咲に薄く微笑む舞。
「それにしても、黒獅子のトップを取った"滝谷旬"はイケメンよね。」
プリントアウトされた写真を手に取りながら、彩花が割って入る。
「ええ、この学園にも隠れファンは多いみたい…」
美咲は彩花から写真を抜き取り、それを舞に手渡す。
「それじゃあ、結構女の子を泣かせているの?」
「それがそうじゃないのよ…滝谷旬は女を近寄らせない、筋金入りの硬派なの。」