風紀委員Girls! 915
爽やかな風が吹き付ける、小高い丘。
高台から眺めるその先には、樹龍市の街並みが見渡せる。
ここは青山家の静養所。
あの日襲われ、精神的に大きなショックを負ったノブアキは、退院してからはずっとこの地で過ごしていた。
少しずつ、日常を取り戻しながら。
「ノブアキ様、朝食を届けに…」
「ありがとう里英さん…そこにおいて…」
カチャ、スゥ―
「里英さん…」
「私、ずっとずっと心配で…ノブアキ様のコト…」
松島里英。青山家のメイドの一人、21歳。
舞によって千載一遇のチャンスを逃した、あのメイドである。
この地に来て以来、ノプアキが接触している人物は里英ただ一人だけだった…
「もういい…下がってくれ…」
ノプアキは冷たく言い放つ…
ノプアキの心の傷はまだ癒えてはいなかった…
この地に来たのも、夏織が心配して毎日のように訪ねて来てくれるのに耐え兼ねてのことだったのだ…
里英は自ら申し出てノブアキの世話役として静養所にやってきた。
「お兄様のお気持ちを最優先でお願いしますね」
「はい」
妹・静香も信頼を置く里英に任せれば兄の精神が回復するかもしれない、その考えはまだ甘かった。
「ノブアキ様…」
自分の力不足に、里英は一人涙した。
そんな里英や夏織の気持ちは、ノブアキは痛いほどに分かってはいた‥
ましては夏織に対して自分がこんな態度を取れば、尚更に夏織に辛い思いをさせてしまうことは分かってはいた‥
だけど夏織はあの場面にいて、自分のとんでもない醜態を見られてしまったことへの憤りは、どうしても拭いされるものではなかったのだ…
自分が情けない。
夏織だってあの時酷い目にあったのに、自分だけがまだ傷ついたままこんな風になっているのは申し訳ない。
今すぐにでも謝りたい。
しかし、その気持ちを邪魔するものが…まだ心のどこかに引っかかるものがある。
「そうか…」
ノブアキはデスクの前に座り、一枚の紙とペンを取り出した。
今の気持ちを書き綴り、夏織さんに送ろう…