風紀委員Girls! 865
治療室の中が慌ただしく動いている。
ただそれは何か一大事という感じではなく、作業からの撤収を意味するものだ。
「夏織さんは大丈夫ですよ。中で皆さんと話をしたがっています」
「ありがとうございます」
優しい笑顔の看護師さんに小春さんが頭を下げる。
扉の向こうから夏織が外を気にしていた。包帯が巻かれた頭や絆創膏だらけの顔は痛々しいけど、その表情はいつもの明るさだった。
小春の肩越しに四人は心配そうに顔を向ける。
こういった場面で、何て声をかけたらいいのか分からない…
「大丈夫………?」
結局ありきたりの言葉しか掛けられない…
大丈夫じゃないのは分かってはいながらに…
「ごめん、心配かけて…お母さんにも、智秋と千冬も、それにみんな…」
「そんなことないわ、夏織が無事なのが一番よ」
小春さんが優しく夏織の頬を撫でる。
「全然大丈夫じゃないんだけどね」
「夏織姉…」
「千冬、泣くなよ。お姉ちゃんちゃんと生きてるから」
「だってええ」
強いんだな、夏織は。
その強さが自分にもっとあったらと真里菜や明日香は感じるのだった。
「看護師さんに聞いたんだけど…ノブアキさんも同じ病院なんですって?…」
何気ない素振りを装いながら夏織が聞いてくる…
それをずっと聞きたかったということは、皆には分かった…
「ええそうみたいね…今頃は静香さんが駆け付けているんじゃないかしら?…」
「そ、そうね…静香さんは妹さんだものね…」
自分が酷い怪我をして、ショックが大きいはずなのにそれでもノブアキのことを思う夏織に恐れ入る…私なら絶対に無理だ。
…恵美菜はそう思った。
夏織は窓の外を眺めた。
今ノブアキと付き合っている彼女として精神的に参っているはずのノブアキの側にいたい気持ちはわかる。
ただ、今は夏織だって…
「いつか夏織の力が必要になる時も来る」
真里菜が夏織の両手を握る。