風紀委員Girls! 615
唯の後に続き家の中に入っていく航平。
玄関の扉は閉まり、姿は見えなくなった。
「追跡はここまでですね」
「さすがに中を覗くことはできないわね」
麻耶と純は再び車に乗り込んだ。
…小川家。
「兄貴…」
「何だ唯、思いつめたような顔して」
「また…友達が襲われたんだ」
「あ、ああ…何かそうらしいな…」
「まさかお兄ちゃん…今回のことに関わってはいないはよね?…」
「何を言い出すかと思えば…お前、そんなこと気にしてたのか?…」
「だって今回のこと…青山静香さんも拉致されたって聞いたから…」
「何言ってんだよ唯…いくら俺ら兄妹が青山家を怨んでいるからといって、そう軽はずみの行動を俺が取る訳無いだろ…」
言葉を濁す航平。
自分が顧問弁護士として関わっているところが関連しているとは、知られたくない。
「私は別に恨んでなんかいないよ…静香さんはいい人だってわかってし、みんな仲良くなれそうなんだから…」
「そ、そうか…」
航平は青海のOBである。
唯は青海に通っていた兄がいることを、周りには内緒にしていた。
まあ、唯が青山家に対してそう思えるようになったことは、感謝するべきことなのかもしれないが…
航平はいつまで子供だと思っていた唯の成長に、父親のような眼差しで目を細める…
「だからお兄ちゃんも、もうあのことは忘れて…」
真っすぐな視線を向け、唯は航平に訴えかける…
もちろん唯とて青山家を恨む気持ちが全く無くなった訳では無かった。
だけどそれよりも、兄である航平のことが心配だったのだ…
青海はエリート候補生の集まり。
出世意欲の強いもの同士、雰囲気のよい校風とはいえないのが事実だ。
航平は、そんな中で酷い仕打ちを受けてきたものの一人…
それでも決して諦めることはせず、司法試験に合格し弁護士の資格を得た。
唯はそんな兄のことを心から尊敬していた。
板挟みされる思い。
青山家への恨みと、ノブアキに思いを寄せる親友・夏織の存在。