風紀委員Girls! 569
「遠慮しなくていいんだぞ」
「あ、兄貴が…」
後ろから旬が顔を覗かせる。
笙はその言葉に顔を少し赤くさせた。
「まあ、あがりなさい、笙。美味しいお茶とお菓子があるから」
おばあちゃんが再び立ち上がり準備を始める。
「あっ、私も手伝う…」
舞もそれについていく。
笙の肩に手をやり、部屋の中へと促す旬…
抱きしめたいほど嬉しいのに、それを行動して表すのは難しかった…
「旬兄ぃ…」
今まで“兄貴”と呼んでいたのに、やっぱり旬の顔を見ると、当時呼んでいた呼び方に戻っていた…
「来てくれて嬉しいよ笙…ずっと会いたかったさ…」
日本の多くの男が、喜びや悲しみなどの自分の感情を表に出すのが苦手なのと同様に、旬もこれだけ言うとが精一杯だった。
でも今は、その言葉だけでよかったかもしれない。
笙の顔はぱあっと明るくなり、旬も照れくさそうに笑顔で返す。
離れ離れにされた兄弟が、久々に会えた幸せを、噛み締めているのだ。
「ほら、2人とも座らんかい」
おばあちゃんは人数分の湯気の立った湯飲みを持って茶の間にやってくる。
後ろから舞が皿一杯に乗ったお菓子を持って続く。
「ばあちゃんは相変わらずだな」
「それが一番だよ」
目の前で繰り広がれる暖かい団欒が舞の胸を熱くする。
お父さんの事業が失敗しなかったら、こんな光景も日常になっていたはずなのだ…
「旬兄ぃのカノジョ…可愛い人だな…」
唐突に笙がニヤつきながら旬に言う…
「ぉ?…、おお;…」
旬は照れながら舞の顔を見てきた。
笙にそう言われ、旬からは思わず見つめられ、舞はどうすることもできず俯く。
「ははは、若いって良いもんじゃねぇ」
ただ一人おばあちゃんは上機嫌だった。
「ところで笙、お前さんは確かもうすぐ高校進学じゃろ」
「う、うん…」
「どこに行くかはきまっとるのかね」
「ま、まあ…旬兄ぃと一緒のところが…」