風紀委員Girls! 566
「おやおや、舞ちゃんを一人にして、旬は何処に行ったんだい…?」
ことの次第を隠さず話す…
旬の弟さんは、おばあちゃんにとっても大切なお孫さんの一人なんだから…
「そうかい…笙が来たのか…それで…母親も一緒だったのかい?…」
「母親?…」
彼の姿を見たときは、周りに他に人影は見当たらなかったはず。
「いませんでしたけど…」
「そうか…一人で来たんじゃな」
おばあちゃんは優しい口調と表情のまま言う。
「亮も旬も笙も可愛い私の孫じゃよ…どうにかして、生きてるうちにもう一度亮と笙の顔を見たいものじゃがねぇ…」
「おばあちゃん…」
舞は自分の祖母の顔を思い出す。
普段は離れた土地に住んでいるが、1年に一度は必ず会いに行く。
そのときの笑顔は絶対に忘れない。
…旬だってそうだよね、きっと。
それにしても弟さんはともかくとしても、お兄ちゃんである多岐亮までおばあちゃんに会いにこないなんて…
「亮さんとはこの先、一緒に住むことになっているんじゃありませんでしたか?…」
確かここはもうすぐ取り壊される筈…そうなったら旬とおばあちゃんを引き取るって、亮は言っていた。
「私はここを出て行くつもりはないよ…、私が出て行ったら、あの子たちの父親が、帰ってくる居場所が無くなってしまうだろ?…」
「お父さん?」
旬は自分の両親のことはまったく話さないので、いきなり出てきたその存在に舞は首を傾げる。
「ああ…まぁ、私の息子なんじゃがな」
「旬たちのお父さんは、よくここに来るんですか?」
舞はおばあちゃんに尋ねる。
ちゃぶ台の上に2人分のお茶が乗せられる。
「いいや、そうもいかないんだろ…私らがこんな生活になったのも、自分のせいだと責任感じているんだろ…」
急須からお茶を注ぎながら、おばあちゃんはゆっくりとした口調で言う…
「責任って?…」
「元々私らが住んでいたのは、もっと丘の上だったんだよ…」
丘の上といえば高級住宅街…真里菜が住んでいる辺りか…