風紀委員Girls! 512
それでも自分の気持ちを抑えることなど、夏織には出来なかった。
それは今まで抑圧された恋愛から、やっと解放されたことからの反動だったのかもしれない…
確かにそういう一面は無くはなかったと思う…
でもそれ以上に、真っさらのノブアキは夏織にとっては、あまりにも魅力的な存在だったのだ。
…それは、夏織がノブアキと付き合い始めて間もない日のこと。
週末、両親がいないのをいいことに夏織はノブアキを家に招いたのだった。
「狭いけどごめんね」
「いや、そんなことはないさ」
恋人同士とはいえ、ノブアキにはまだどこか余所余所しさがあった。
窓側のソファーに腰掛ける夏織。
太陽の光が反射して、自慢の長い黒髪が綺麗な黒光りしてるのに、ノブアキは見惚れてしまった。
自分が夏織個人ではなく、女性そのものが知りたくてここに来てしまったことは分かっていた。
まあ夏織じゃなくても、今の自分なら女なら誰でもよかったのかもしれない…
そう思うとそんな自分が情けなく、ノブアキは自問自答を繰り返していて…
「どうしたの?…何だか心ここにあらずって顔してない?」
「いや、そんなことないさ…」
夏織が覗き込むように顔を見られ、ノブアキは視線を逸らす。
「なんかヘンだよ」
「それは…」
自分でもよくわからない緊張か、胸騒ぎがする。
それを打ち消すために差し出されたジュースを飲む。
「私、ノブアキくんなら、何されてもいいよ…」
クスッっと笑いながら、夏織は横目でノブアキを見た。
それは半分冗談ではあったけど、もう半分は本気だった。
顔を赤らめて、どぎまぎするノブアキを見ていると、同年代の男の子のウブさを実感してしまう。
それは今までの夏織の人では、決して見ることの出来無かった表情だ。