風紀委員Girls! 483
次いつ沙里菜さんに会えるかはわからない。
沙里菜さんと付き合っているわけじゃないから俺がどうこう言う権利などないのだろうけど、心の中は寂しさでいっぱいになった。
「そんな顔しないの。私と永遠の別れになるわけじゃないんだから」
「でも…」
「次に会うときはもっと男らしい旬くんでいてね」
「は、はい…!」
“永遠の別れじゃない”……か…
同じ台詞を言って、お袋は弟を連れて家を出ていった…
あれから一度もお袋は、俺に会いには来ることはなかった…
哲…元気にしてっかな?…
今となってはお袋より、弟の哲に旬は会いたかった…
まだ薄暗い空、2人でラブホを出た。
「ありがと、付き合ってくれて」
「沙里菜さんこそ…彼氏怒ってないっすか?」
「大丈夫。メールとかなんにも来てないから」
沙里菜は笑ってそう言った。
「じゃあ、またね」
「はい、沙里菜さんとまた…」
「それもだけど、旬くんは舞ちゃんを愛してあげてね」
沙里菜は満面の笑みを浮かべながら旬と別れたのだった。
”舞ちゃんを愛してあげてね”…か
沙里菜に言われた言葉が旬の心に重くのし掛かる…
再開発指定地域は、立ち退きにあった家々でまるでゴーストタウンみたいだった。
朝だというのに死んだような街を、旬は背を丸めて歩く。
「あれ?亮の弟だよな?…」
高級住宅地域に続く坂道を下って来たのは、春日粋だった…
「おおっ…どうしたんっすか、こんな朝っぱらから…」
さっきまで沙里菜と一緒にいたのに、その彼氏にも直後に出くわしてしまうとは…旬は焦った。
「ああ、毎朝こうして走ってるんだ」
「…へぇ、いつ頃から」
「2,3年位前からかな…」
…その頃って、兄貴といろいろあった頃じゃなかったっけな、と旬は感じた。
粋の見た目とは縁遠い趣味か日課だなとも思ってしまった。