風紀委員Girls! 404
「えっとね…変わった名前なんだ、春日粋くん」
「あら…」
静里菜は一瞬言葉に困った。
あの頃散々自分たちが噂した少年に間違いなかったのだ。
「そう…」
「カッコいいし、優しいし、いい人だよ…ちょっと人見知りだからあまり喋んないかもしれないけど」
当時の粋の姿が静里奈の中で蘇る…
あの頃はカッコいいと言うよりも、どちらかというと可愛い印象の強い少年だった…
そんな粋と外人並な容姿を持った滝谷亮…
余りにも絵になる2人を見て、暇な主婦たちが想像力を掻き立てられたのは無理も無かったのだ…
「無口ぐらいな方が男は魅力的だはよ…、好かれようと愛想振り撒く男よりか、よっぽどマシだと思うは…」
手際よく調理する静里菜。
そのとき、彼女の携帯がメールの着信を知らせる。
「あら、お父さん…えっ…せっかく…」
先程とはまた違う落胆の表情を浮かべる静里菜。
「お母さん、どうしたの?」
「お父さん、急に会社の食事会に参加することになって…沙里奈、その彼、普段よく食べる子?それとも食が細かったりする?」
「それだったら心配いらないはぁ、細身のくせによく食べるから、お父さんの分までペロッといくと思うよぉ。」
確かにあの頃も脂肪とは縁がない程に細い身体をしていた…
食が細いのかとばかり思っていたが、そんなことは無かったのか…
「それは頼もしいはぁね。作った甲斐があってよかったはぁ!」
気を取り直す静里菜。
沙里菜が選んだ男、きっといい男なのだ。
あの噂はあくまで噂。それがすべて事実だなんて思わない。いや。思いたくない。
その彼が、自分の手料理をたくさん食べてくれるのなら、それでいいだろう。
ピンポーン
インターホンが鳴る。
「どうやら彼氏さんの到着のようねぇ」
「迎えに行ってくるねぇ」
沙里菜が玄関へ向かう。
その先にはもちろん、粋の姿があった。
「…来ちゃったけど、本当にいいの?」
180を超える身長に、女性かと思うくらいの小顔と細身の身体。
彼は表情を曇らせ、弱々しく沙里菜に話しかけた。