風紀委員Girls! 360
明日香たちからしてみれば、いつもの麻耶はなんだかダルそうでやる気のない感じが当たり前だった。
それが、今は違って見えた。
「桃子ちゃんが心配だったから…由真のときのことも思い出しちゃってさ…」
「由真センセが、かぁ…」
後部座席で桃子に擦り寄る真里奈が、そう呟いた。
車は麻耶が一人暮らしするマンションに着いた。
地下の駐車場から一気に最上階のペントハウスへ向かう。
「うぁ!麻耶さんがこんなリッチなマンションに住んでいるなんて、ぜんぜん知りませんでしたぁ!」
硝子張りのエレベーターから見える夜景に感激しながら、明日香は声を弾ませた。
「ほんと…凄い綺麗…」
真里奈の腕の中で、桃子が小さく囁いた。
「いや…私だってこんなところに住めるなんて、思わなかったからね…」
「麻耶さんって、実はいいとこのお嬢様とか…」
真里奈が言う。
「そうでもない…と思いたい…学生時代は喧嘩してばっかだったんだよ」
「ありゃ、意外ですねぇ」
明日香はいつもの調子に戻りかける。
「私に対する態度が変わったのは、警察官になったって言った直後だったかなぁ…」
「そりゃあ公務員ですもの…ご両親も安心なさったんじゃないですか?」
「そうね…自分の娘は警察にご厄介になることはあっても、その逆になるなんてことは夢にも思わなかったと思うは…」
「素敵ですよ麻耶さん。逆転ホームランみたいじゃないでぇすかぁ〜」
「やだぁ、野球選手は好みじゃないのよ…」
「ちょっとぉ、そっちじゃないでしょ。」
桃子も思わず突っ込みを入れていた。
麻耶は一瞬びっくりしたような顔をするが、すぐにそれは笑顔に変わり、その瞳が潤み出す。
「桃子ちゃん…元気、取り戻したの…?」
「麻耶さん…らしくないですよぉ…泣いちゃったりして…」
麻耶は明日香と真里奈の表情を伺おうとした。
その顔は、麻耶と同じだった…