風紀委員Girls! 337
夏織はノブアキを連れ、舞たちが見えなくなったところで立ち止まる。
「夏織さん…いったい何を…」
ノブアキに振り向く夏織。
その表情は、満面の笑みそのもの。
「最初に会ったとき、ノブアキさんにひとつ嘘をついた」
「えっ?それって…」
「私、ノブアキさんとは初対面じゃないんだ」
「えっ…でも君の名前、初めて聞いたんだけど…」
「…お母さんの離婚でね、2回名前が変わったんだ…ノブアキさんに会ったその頃は、『西原夏織』だった。覚えてます?」
夏織はそう言って、ノブアキを見詰めた…
ノブアキは毎日、いろんな女の子に言い寄られて育ったのだから、自分のことを覚えているかの自信は無かった。
それでも“西原”の名前を出せば、ノブアキは必ず思い出すであろうことは分かっていた。
「ああ…そう言われたら…随分印象が変わったような…」
「まあ、私はその他大勢でしたから…」
夏織は笑顔を崩さない。
風が、腰くらいまである長い黒髪を靡かせる。
「それと今と、何か…」
「好きです…ノブアキさんのこと」
夏織は意を決して、ノブアキに告げた。
「あ…、そう言って貰えると嬉しいな。」
一瞬驚いた顔を見せながらも、ノブアキはさらっとかわす。
「そうですよね…ノブアキさんにとってはこんな告白、日常みたいなもんですよね…」
「あ、いや…そんなことも無いけど…」
ノブアキは鼻の頭を掻きながら、曖昧に答えた。
「でも、好きなんです。ノブアキさんのこと…私、本気です」
夏織はノブアキをじっと見つめる。
「でも…ごめん、僕は、君が好きとか、付き合うとか、選ぶことはできないと思う」
「碧がいるから…ですか?」
「まあ、それは…」