風紀委員Girls! 305
「厄介な話ですね…」
奈々が再びデスクの上で俯く。
「胃薬が何個あっても足りませんよ…」
「おいおい、奈々ちゃん、しっかりしてくれよ…」
利奈が湯飲みを持ちながらため息をつく。
「過去に、今回のような出来事ってあったんですか?」
綾子が利奈に尋ねる。
「そうねぇ…」
利奈は、舞と旬の関係を、昔の自分と今の夫の関係と重ね合わせていた。
黒獅子でトップを取った夫も、旬のように優しい男だった…
黒獅子だからといって偏見の目で見てはいけないことを、利奈は身を持って分かっていた。
「ここは榊原先生にも相談した方がいいはね…」
榊原由真…
清美の養護教員である。
「…うーん…私にできることと言えば、桃子ちゃんや、みんなの心のケアぐらいしか」
「それが大事なの…由真ちゃんも力を貸してほしいのよ」
職員室にやってきた由真に、利奈が言う。
「今までずっと黙っていたんですけどね…」
由真は慎重に、言葉を紡ぐ。
「私も、黒獅子の男子に無理やりされて、その結果が、今の娘だったり、するんです…」
声が震えていた。
「そうだったの…知らないこととはいえ、ごめんなさい…」
「いえいいんです…もう過ぎたことですし…今では双子の娘たちと楽しく暮らしていますから…」
由真は鼻を啜りながら、微笑んだ。
「それで相手の男…娘さんたちの父親は、今どうしているの?…」
「私もよくわからないんです…あのときはそれこそ桃子ちゃんのような状態で…」
「そうなの…」
「でも、私が堕ろすのではなく産むと決めた後、そのときのリーダーのご両親が来て、謝罪したんです。なんでも、会社の社長さんだったみたいで…」