風紀委員Girls! 110
「そうなのかねぇ」
「私も良くわかりません」
一緒になって首を傾げる舞と静香。
清美も桜咲も私立校。制服はブレザー。
「(親父共が好きなのはセーラー服だよね)」
「でも…知りませんでした。黒獅子の方が、経済状況が優れない方が多いのは…」
静香がしんみりとした表情で言う。
「ああ、あんたらとはまるで環境が違うだろ…」
2人のやり取りを聞きながら、舞はある親友の顔を思い出した。
清美生徒会、もう一人の会計・早坂桜。
両親がいない上、幼い5人の弟妹の面倒を見るため、あまり風紀委員の仕事に関われない桜の姿は、旬と重なっているように舞は感じた。
確か住まいもこの辺り…
ここ樹龍市は、昔っからの町工場や肉体労働で生計を立てる層と、ここ最近急激に増えたセレブ層とで二分されているのだ。
得にこの辺りはそれが顕著に現れているといってよかった。
青海始め桜咲はセレブ層の子供しか入学は許されてはおらず、それに対して黒獅子の連中が面白くないのは当り前だった。
そんな中で、この春できた清美はその門を広く開け、碧のようなセレブ層もいれば、早坂桜のような家庭の生徒もいる、この辺りでは珍しい学校だった。
ガチャリ
「…?誰か来ましたね」
「ああ、ばあちゃんが帰ってきたんだな。病院に行っててな」
「病院から歩いて?」
「いや、この近くまで無料のバスが走ってるんだ」
「おーい、旬やー、お客さんかね?」
「おう、ばあちゃん、お帰り」
旬がおばあさんを迎えに玄関へ向かう。
「心優しい方ですね」
「でしょう」
静香と舞は、目を合わせて微笑んだ。
「おやまあ旬ったら、お嬢さんたちの前でそんな恰好でぇ…」
だから早くズボン穿けって言ったのにぃ…
「せめて私が買ってやったやつに着替えんしゃい!」
そういうことでも無いと思うんですけど…
「あ、あのぉお…」
え?…
おばあさんの背後から現れる男…
「お、お兄様ぁ?!」
静香が目を見開いて驚く。
「し、静香!?お前なんで…って、その服はどうしたんだ!?」
「こ、これは…な、なんでもないっ…!」
「(何でこんなところで)」
舞はこの偶然に頭を抱えたくなった。
「なあ舞…コイツが、青山ノブアキなのか?」
「あー、うん…」
…そして、ここで出くわしてしまったか…