君の人生、変えてあげる。 99
ここ二週間たらずのうちに、いろんなことがあった。
もし、前の学校で我慢していたら絶対に経験できなかったこと。
僕の記憶も、確実に、上書きされていくんだ…
「ねえ、たっくんの本命って、やっぱりアスなの?」
「えっ??」
いきなり皐ちゃんにそう聞かれて、困ってしまった。
「変なこと聞いてごめん…でも、ちょっと気になって」
「やっぱり、そう見えるのかな」
「うーん…たっくん、何か相談事があると、アスに聞きに行くし、仲良く見えるから…って」
「…僕は、誰が、とかまだ分からないな。でも、みんなのことは大好きだよ」
皐ちゃんは、ちょっと微笑んで、続けた。
「きっと、みんなも、たっくんのことが好きだから。気づいていると思うけど」
「うん…」
「アスとか、あと胡桃ちゃんは…クラスの雰囲気を考えてくれて…なるべく多くの人に、こう…チャンスを渡そう、って考えたみたい。さっきのは、それ」
…チャンスか。
「みんなたっくんのことが好きだから、私もできるだけみんなにチャンスを与えたいって思う。そのときは、たっくんも応えてあげて欲しいな」
「うん、頑張るよ」
今後、こういう機会があるのだろうか、僕はちょっと想像した。
何人かのクラスメートの顔を思い浮かべた。僕はもう、クラスメートの体も、何度も見ているから思い出すことができる…
いけない…それが反応してきた…皐ちゃんの前で、他の子を思い出して、何て失礼だ。
僕は、それが、皐ちゃんに見えないようにした。
二人でしばらくゆったりした後、もう夕方に近くなって、僕たちは服を着て、帰った。
帰って、シャワーを浴びたいと母さんに言った。
「珍しいわね」
「汗をかく作業があったから」
暑いなか掃除していたのは本当だ。