君の人生、変えてあげる。 94
ニコォと微笑むひーちゃんと、話を聞いた後僕のほうをチラチラ振り向く皐ちゃん。
…いったい何があるというのか。
参加メンバー全員に話が伝わった(僕は含まれない)ところで、胡桃ちゃんを先頭に部屋から引き上げていく。
「ど、どうしたの?」
「これが、その答えさ」
ニヤついたまま、胡桃ちゃんは部屋から出て行く。
後ろで飛鳥ちゃんは赤面しながら出て行く。
そういえば2人、何話してたんだろう。
…部屋の中はあっという間に僕と皐ちゃんだけになってしまった。
「まず、掃除はこれで終わりで、重いものを出したり、ロッカーを移動させたりは、明日朝には間に合わないけど、後日学校側がやってくれるって」
「そっか、おつかれさま!」
僕は、この、二人きりの、不思議な状況から早く離れようと、自らのズボンを手に取ろうとした。
皐ちゃんは、僕に、一歩近づいた。
「たっくん…みんなそうだと思うけど、私も、たっくんに、近づきたかったんだよ」
ズボンを取ろうとした手が止まる。
「着替えのときに見たたっくんの傷を見て、私は、たっくんに比べたら大したことないんだ、私も、自分の傷と向き合って、前を向いていきたい、そう思えるようになったんだ」
「皐ちゃん…」
外で会話していたほかの子達はもう帰ったのか、シーンと静まり返っていた。
「たっくん…」
「皐ちゃん…」
僕も、皐ちゃんに一歩ずつ近づいていく…
僕と皐ちゃんは、お互いがお互いの体に手を回した。
暑い中だったので、お互いの汗が混じりあうような感覚だった。
「汗びっしょりで、ごめんね」
「僕も、汗かいてるから、一緒だよ」
そうして、僕と皐ちゃんは、どちらからともなく、唇をつけた。
皐ちゃんは、ここで一旦、僕から離れ、そして、下を向いて、言った。
「あの、私、はじめてじゃないんだ…でも、好きな人とは、はじめてなの」
…?
少しの間だけ、皐ちゃんの言ったことが理解できなかった。
「たっくん、どうかした?」
「ん?いや…その…なんでもないけど…」
頭の中で考えて、ようやく理解できた。
「ごめんね、たっくん」
「ううん、僕が、皐ちゃんの好きな人に選ばれて嬉しいよ」