君の人生、変えてあげる。 92
教室に戻る。
「お帰り、たっくん」
歩ちゃんとひーちゃんが声をかける。
「どうだった?」
「うん、協力を得られそうだよ」
「それはよかった」
2人ともニッコリと笑う。
「それより、あのアスの顔を見ると、やっぱり」
「うん…大変な先輩方だね」
このあとは教室移動がある情報の授業なので、教科書を持って移動していく。
飛鳥ちゃんが、一瞬だけ近くに来た。
そして小声で言った。
「さっき『カノジョ』って言われて…そうだったらいいな…って、思った」
飛鳥ちゃんは前を向いたまま、そう言うと、すぐに僕から離れた。
5,6時間目の情報が終わって、放課後は昨日話があった更衣室になる教室の有志での掃除がある。
そもそも、僕がいるから更衣室が要るようになったのだから、僕も当然行く。
「ほこりっぽかったから、体操着を持っていこう」
飛鳥ちゃんが、参加者にそう声をかけた。
…というわけで体操服を持って更衣室へ。
飛鳥ちゃんが深沢先生から受け取った鍵で部屋のドアを開けると…
「うわ、暑っ」
開けた瞬間やってきた空気の暑さに、胡桃ちゃんが思わず声を出す。
「…エアコンないからなぁ」
飛鳥ちゃんも呟いた。
閉め切られた部屋で、西日も入って、むわっとした空気だ。
「まずは、開け放って、空気を入れ替えよう」
胡桃ちゃんは、反対側のドアを開けに走ろうとすると
「ちょっと待って」
飛鳥ちゃんが、ちょっと考えるような仕草をした上で、胡桃ちゃんを制止した。そして、無言で入って行った。一同、それに続いた。
参加する全員が入って、ドアを閉めて、飛鳥ちゃんが言った。
「ねえ、強制するわけじゃないけど…更衣室になる部屋だし、脱いで掃除するのはどうだろう?」
…え
飛鳥ちゃんの提案に、一同面食らったような顔に。
「…まあ、それもそうか」
「確かにアスちゃんの言うとおりかも」
胡桃ちゃんや律ちゃん、凛ちゃんたちが飛鳥ちゃんに続いて服を脱ぎ出す。
…この状況にイマイチついていけないでいたのは、僕ともう一人、皐ちゃんだった。