君の人生、変えてあげる。 86
「立候補じゃなくても、僕らをサポートしてくれる存在になってほしいと」
「そうだね。そういう人も必要だね」
飛鳥ちゃんも納得する。
「で、黒田先輩のクラスに行くんだ」
「うん」
「あのクラスは、相当メンツが濃いよ〜。たっくんみたいな男の子は困っちゃうんじゃないかなぁ?あ、でも良い人ばかりだからね」
…歩ちゃんがそう言う。
歩ちゃんは続けた。
「あのクラス…2年1組は、まず、文芸部の先輩が結構いるよ。磯村先輩、高森先輩、そして、菊川先輩も」
「えっ、あの『エロ担当』の?!」
僕は思わずそう口にしてしまった。
「『エロ担当』って?」
飛鳥ちゃんがきょとんとしてそう聞いた。
「いや…気にしないで、何でもない」
「ふっふふ、たっくんも、菊川先輩の洗礼を受けたようでねぇ…」
歩ちゃんの後ろから、ニヤッと笑って顔をのぞかせるひーちゃん…
「ねぇひーちゃん、その菊川先輩って…」
「アスちゃんはあまり知らないほうがいいんじゃね…って言っても無理だよね」
「まあ、たっくんに協力してもらうためだから…」
飛鳥ちゃんはいたって真面目だ。
「それと、文芸部じゃないけど、もう一人、結構なお方がいらっしゃってだね…」
歩ちゃんが神妙な面持ちで話を続ける。
「ねえ、アス、ビーエル、って知ってる?」
「ええっ…」
飛鳥ちゃんはちょっと首をひねった後、スマホを取り出して、検索を始めた。
僕も、実はその言葉は知らないがまずは静観した。
「貿易用語?」
歩ちゃんはぷっと吹き出した。
「アス、敢えて何か避けてない?」
「えええ…じゃあ、こっちの、ボーイズラブ…のこと??」
「そう、その、ボーイズラブがとっても好きな先輩がいるの」
「ぼ、ボーイズラブ、って?」
思わず口に出てしまった。
「たっくんは知らないようだな」
歩ちゃんがなんだか楽しそうだ。
「一言で言えば、男同士の恋愛」
…男同士の…恋愛?
「…たっくんには言うべきじゃなかったんだよ」
「でもいずれは知り合う人だからねぇ」
歩ちゃんとひーちゃんのやり取りを聞く。