君の人生、変えてあげる。 85
「希望者は女子クラスに…の方は、どう思う?」
母さんは腕を組んだ。
「うーん、これは、交渉するなら工夫がいるかも。どのくらい、希望者がいるか、今は判らないでしょ。たとえば、一クラス分も希望者がいなかったら、2.5クラス分くらいだったら、どうするとか、クラス編成をする立場にたって考える方が、交渉しやすいかも…それに…“共学化反対だけど、女子クラスにいけるならそれでいい”と思うかは、たぶんそう思う人と思わない人がいる…可能ならアンケートとか取ってもらうのもいいかも」
なるほど。
やはり、OGで生徒会役員経験のある母さんに聞いておいて正解だった。
「まあここまで来ると、一生徒間で解決できる問題じゃないと思うな…生徒会の選挙でもそうだけど、一度聡美に話し合ってみても…」
…やはり聡美さんの名前が出てくるか
「まあ、後は拓真が頑張るだけね」
「そうだね」
翌日、登校して、まず飛鳥ちゃんに母さんが言ったことを話した。
「そうだよね。共学にするとこんないいことが…これは、たぶん私たちが表現するのがよさそうだね…うん、まとめてみるよ」
「おはよう、たっくん、アス」
そこに、みさちゃんが来た。
「昨日の話、姉に話したよ」
「それで、なんて言ってた?」
「1年生の私たちからこんなに中身のある案を送ってくれるなんて、って喜んでた」
みさちゃんがニコリと笑って言う。
「自分の考えてたことが、性急過ぎたとも言ってた。段階的に、みんなと話し合って進めたいって」
「そうなの。ありがとう」
飛鳥ちゃんが言う。
「ところで、飛鳥ちゃん」
「ん、たっくん、何かな?」
「今回のことで協力してくれそうな先輩を紹介したいんだけど…」
「もしかして、昨日言ってた、今日の昼の話?」
「うん、そう。会長さんともつながりがあって、いろいろ作戦に詳しそうなんだ、黒田先輩」
「立候補とかはお願いできそうかなぁ」
「うちの部長?」
黒田先輩と聞こえたのか、歩ちゃんがこちらに近づいてきてそう言った。
「そう」
「黒田先輩は、たぶん、前面に出るのではなくて、誰かを前面に出して、自分は後ろからいろいろやっていく感じだと思う」
確かにそうだろうな。あの方、立って演説とかしているより、本に囲まれて淡々と何かしているほうがあっていそうな気がする。