君の人生、変えてあげる。 74
母さんが持ってきた古いアルバム。そこには「昭和○○年度 星が丘女子 高等科 思い出」のようなタイトルが書かれていた。
僕は、開かせてもらった。
「カラーなんだね」
「当たり前でしょ、何年前だと思ってる?」
母さんは冗談で僕をはたくような動作をした。
「うーん、やっぱり、今よりスカート長いんだね…ええと、母さんは何組だったの?3年の時」
「1組。クラス替えは無くて、ずっと1組」
「へえ、僕と同1組だったんだ…ええと、母さんの旧姓、川瀬 真央…」
「母さんを見るんじゃないでしょ」
母さんの隣は、香椎聡美…茉莉菜ちゃんのお母さんで、涼星学園の理事長。
いかにも気の強そうな顔をしている。こうして見ると、茉莉菜ちゃんも結構似ているから…?
そして、ページの最初の方、綾野華子…可憐ちゃんのお母さんは…
…確かに母さんの言うとおり、可愛い。しかし、お嬢様っぽい可憐ちゃんとは正反対で、これも母さんの言うとおりおとなしい印象がした。
雰囲気は違うけど、頭の中で、可憐ちゃんの髪形を写真に当てはめてみると、確かに似ているような感じがした。
「うん、可憐ちゃんと似てる気がする」
「可憐ちゃん、っていうのね。華子の娘さん」
僕は、母さんの了解を得てさらにページをめくっていった。
母さんの同級生たちがスクール水着で写っている写真は、正直複雑だ。
体育祭などの写真では、こんにちではフィクションでしか見られないブルマ姿だった。
「ブルマって、やっぱり、恥ずかしかったりしたの?」
「あの時は、それが当たり前だったよ」
そして、最後の方に、各生徒の連絡先の住所電話番号が書いてあるのも、たぶん昭和的なのだろう。
「今では、住んでるところも、苗字も、だいたいの人は違うけどね」
そう言って母さんは微笑んだ。
「今でも、同窓会とかあるの?」
「うん、年一回くらい。拓真は知らないかもしれないけど、近所に住んでる子も結構いるの」
「そうなんだ」
「いずれ拓真にもそういう日が来るよ」
…卒業アルバムや同窓会、いずれ来るのは確実だが、そこに男は僕一人。少し不思議だ。
編入の話はあるが、何十人も来るとは思えないし、僕は、涼星の、一組にいられるなら、きっと卒業までクラスに一人だけの男子でいるのだと思う。根拠はあまりないけど。
僕は、卒業アルバムの、校舎の少し上の方から撮った、在校生を含む全校生徒の写真を眺めた。
二年半後の卒業アルバム、そこには、ある程度の男子がいるのか、または、男子は僕一人なのか、または…できれば考えたくないが、僕はそこにはいなくなってしまうのか…
できれば、みんなが楽しい方向に、行けるよう、手伝っていけたら、と思う。
翌朝、登校すると、僕は飛鳥ちゃんに隅の方に行くように言われた。
「2組の、立候補考えている人、分かった…藤澤 未華子さん…美術選択の教室にいたから、顔を見れば、ああ、と、たっくんも思うと思う」
「そうなんだ…」
あの、教室にいた人の一人、というのは、ちょっと衝撃だ。2組の美術選択の人とは結構打ち解けた、と思ったのだが。
「それで…まだ、遥ちゃん経由で聞いただけだからよくわからないんだけど、なんか、男子の前で裸になるのが不安で…のような、ことを考えたみたい…誰も強制するわけじゃないのに」