君の人生、変えてあげる。 72
「たっくんがいなくなるなんて!それは嫌!」
飛鳥ちゃん、ちょっと大きめの声を出す。
「…そう。そう言う人がいるだろう、ということも考えての、さっきの『たっくんだけ、いてもらおう』案みたいなんだ」
僕は、何とも言えない気持ちになった…でも、ここに来て、よかったこと、そして、周りの人の気持ちも、確かに本物だと、今の僕には信じられる。
僕は立ち上がった。
「僕は、ここに来て、良かったし、クラスのほかの人にとっても、よかったと、思っている。僕は、それを、もっと広げたいと、思う」
僕の言葉に、みっちゃんは感心したように微笑む。
「僕はこの学校に来て、周りの人の優しさ、温かさを感じることができた。それが嬉しかった。それを、より多くの同じ男…男子に感じてもらいたい。だから、生徒会に立候補するんだ」
このとき、初めて感じた決意。
僕は、生徒会に立候補する本当の意味を知ることができたかもしれなかった。
…隣の飛鳥ちゃんが、感極まったのか、涙を流していた。
「意見を言ってくれてありがとう。これでまた、たっくんのことを、男子じゃなく男性と思えることが増えたよ…そろそろ戻る?」
僕たちは、涼しい林を出て、また暑い道を丘を登って、もとの部室に戻った。
大森先輩は3人に冷たいお茶を出してくれた。
そして、大森先輩は、他の活動として、校内の花壇の手入れや、学校の周りのゴミ拾いなどもやっていること、この環境ボランティア部だけでやるのではなく、だいたいどの活動も、やるときは募集しているから、入るとか入らないとか考える前に一度良かったら気軽に来て、のようなことを言った。
飛鳥ちゃんと2人で教室に戻る。
「ごめんね、つい感情が爆発しちゃって」
「いいよ。飛鳥ちゃんが素直に思ってることがわかって嬉しい」
「私は、私たちは、たっくんの味方だから」
「うん、ありがとう」
僕に救いの手を差し伸べてくれたのがこの学校、ならばその学校を変えることの手伝いもできれば…と思っている。
「あと、立候補する人の集まりだけど、明日の放課後、時間ある?」
「うん」
「たぶん、学校の外でやった方がよさそうかも。場所はこれで連絡するよ」
飛鳥ちゃんはスマホのアプリに「こんにちは(ハート)」とテストメッセージをくれた。
飛鳥ちゃんと僕は下駄箱へ歩いていく。
飛鳥ちゃんは小さめの声で言った。
「最初に、立候補届を出すのは、みさちゃんにやってもらおうかな、って思ってる。会長の妹!というのはそれなりに相手にもインパクト与えられるかな、と思って」