君の人生、変えてあげる。 71
みっちゃんは、ぱあっと明るい笑顔になった。
「よろしく…えっと、酒本くんは、なんて呼ぼうか」
「普通でいいけど」
「うちのクラスのみんなからは『たっくん』で」
飛鳥ちゃんが言う。
「じゃあ、よろしく、たっくん」
「よろしく」
僕とみっちゃんは、自然にメアドを交換した。
他のクラスの、初対面の女子と、こんなに自然にメアド交換できるなんて自分でもびっくりする。
「ここの活動は、木を運んだり、力仕事とかあるし、男手大歓迎だよ。入部するとか、かたいこと考えなくても、手伝ってくれるだけでも私たちはうれしいよ」
「ところでみっちゃん、男子を避けたかったのに、ここの活動は大丈夫だったの?」
飛鳥ちゃんがこのように聞いた。それは、純粋に心配している感じだった。
「最初は不安だった。でも、環境を良くすること興味あったから、思い切って外部にかかわるこっちに参加してみた…大丈夫。ここでは、男性はおじさんとか、定年後のおじいさんとか、大人ばかりで、男子はいない…たっくんのことも、避けたかった男子ではなく、男性とみることにしたよ」
みっちゃんは立ち上がった。
「もし、うちのクラスに男が来ることがあっても、まずは、男子ではなく、男性として、見てみようと思う」
「ありがとう、みっちゃんがそう思ってくれたら嬉しい」
「よろしくね」
みっちゃんはそう言って微笑んだ。
「ところで、ちょっと話は変わるんだけど」
飛鳥ちゃんが言う。
「たっくんが、生徒会の選挙に立候補するんだ。みっちゃん以外のクラスの委員長には協力ももらって、立候補してもらうつもりなんだ」
みっちゃんは、一瞬複雑な表情をした。
「うん…それは、ちょっと聞いてる。それに参加できたら、良かったと思うよ…私は、どっちの味方も、表だっては、できないけど、投票は、より高等科を良くしていけると信じられる方に入れるよ」
みっちゃんは、飛鳥ちゃんの両手を握った。
みっちゃんは、声を落として、こういった。
「アスちゃんの笑顔を見て、たっくんの方が、そうかもしれないと、私は思う」
僕は、きのうの夕方にちょっと茉莉菜ちゃんと話していた“希望を取って、女子クラスを希望する人はクラス替えの時にそういう人で集まってもらう”というアイディアについて話した。
みっちゃんは、もう一度座り、ちょっと真剣な表情になった。
「もし、逆に『たっくんが卒業するまで、たっくんの涼星生としての地位は保証する。もちろん卒業証書も発行する。その代わり、それ以上に男子を受け入れることは当分の間凍結する』って言い出す人がいたら、どうする?」
僕は、一瞬固まった。
「所領安堵」は、確かに、もし両方の勢力が同じくらいと思われるなら、当然逆もあるのだ。
「じゃあ、たっくんに出て行ってもらう、って言う人も、いるの?!」
「…さすがに、そういう人は多くはないけど、ゼロではないみたいなんだ。困ったことに」
「たっくん、二回目の高校中退者になっちゃうの?!」
飛鳥ちゃんは、本当に怒ってくれているようだ。
「たぶん、それを言っている人は、系列の高校に転校してもらおう、っていう意見みたい」
「系列の高校なんてあったっけ?」
「私はよく知らないけど、理事長のつながりがある、って、それを言ってる人は、言っているらしい…本当かどうかわからないけど、理事会の中にそう言っている人がいて一部生徒をけしかけている、という噂も、ある」