君の人生、変えてあげる。 62
教室に戻ったらちょうど、お母さんが理事長の茉莉菜ちゃんが帰るところだったので、今考えたようなことを聞いてみた。
「実は、お母さん、共学化を進められる、と決まったら、その後の第二弾として、編入も考えているみたいなんだ」
「編入?」
「そう。たっくんが1組に来たこれまでの一週間で、たっくんにとっても1組にとっても、ずいぶんいい影響があった。たっくんもそう思うでしょ」
「うん」
「これはお母さんの思ったとおりらしいんだ。そのよいモデルを展開しよう、ということで…さすがに現3年生は関係ないと思うけど、それ以外のクラスにも男子を入れようと、中退者とか、不登校の人とか、高認予備校にいる人とかをスカウトしよう、って準備をすすめているみたい…だから今の1年生と2年生ではどのクラスにも男子が来る可能性が出てくる」
「そうなんだ」
「女子校である部分を残す、っていうことなら、たとえば希望を取って、女子クラスを希望する人はクラス替えの時にそういう人で集まってもらう、とかなら、できるかもしれないよ…1組は、たぶん誰もその希望はしないけどね」
なるほど。
聡美さんはどんどん門戸を広げようとしているんだな。
「できれば、僕は二年生になってもみんなと同じクラスがいいかな」
「それは私も同じだよ」
茉莉菜ちゃんは笑って言う。
「実は、この学校、それほど大規模なクラス替えは行わないんだよね」
「そうなの?」
「この学校では、学年が上がっても、よほど何か人間関係とかの問題がなければ、そのままのクラスになる。3年生になったら文系、理系コース別の授業になっていくけど、共通の授業やホームルームはもとのクラスになる、だから、大半の人は、何もなければ、そのまま1組」
「そうなんだ」
「だから、さっきの『クラス替え』は、例外的なものになると思うけど、たっくんが生徒会本部副会長に当選して、本部をその意見にまとめて、学校側と交渉するなら、それはできると思うよ」
「うん、参考にさせてもらうよ。ありがとう」
そう言って、茉莉菜ちゃんと別れ、帰路についた。
…家に帰って。
「おかえり。今日は何してたの?」
母さんが言う。
「うん、部活の見学。クラスの子に誘われて」
「へえ、どんな部活なの?」
「文芸部。小説とか漫画とかをかいたりする部活だったよ」
「そう」
母さんは優しく言った。
「拓真に合ってるんじゃない?」
「何で?」
「作文得意だったじゃない」
「得意っていうほどでも…」
小学生の時は、作文好きだったこともあったかもしれない。