君の人生、変えてあげる。 7
胡桃ちゃんが何をやろうとしているのか、妄想は控えなくてはならないが、二人きりになることのような気がする。
周りの状況から考えると、周りに分かる状態で二人でどこかに消えたら、確実に噂になってしまう…それは、胡桃ちゃんとしても避けたいに違いない。
「たっくん、どうしたの?四時間目始まっちゃうよ」
「あ、行くよ」
教室に戻って、みな制服に着替えた。それは、僕はなるべく見ないようにした。鼻や、下がこれ以上ひどい状態にならないように。
僕は席に着いた。みんなだんだん席についていく。
不意に、左から何か紙片が置かれた。
胡桃ちゃんが前に向かって歩いて行った。
僕は一番後ろの一番廊下側の席で、彼女は多分誰にも気づかれずに紙片を渡した。
僕は、紙片をそっと開いた。
『今日の放課後、残っててね』
…胡桃ちゃん
『責任、取ってあげる』
『もっと、仲良くなりたいの…』
胡桃ちゃんの言葉が頭をよぎる。
そのときの胡桃ちゃんの表情やこの文字を見ただけで股間がまた興奮しそうになるが、それはグッと堪える。
一抹の期待と不安が交錯した。
―4時間目の授業(世界史)が終わり、これから昼休みに入る。
「たっくんも一緒に来て。食堂の使い方教えてあげるよ」
歩ちゃんがそう言うので、僕もついていく。
きのうは外から見ただけの食堂だったが、入ってみると、やっぱり明るくて広かった。
そして、女子生徒でいっぱいだった。
…違うクラスや違う学年の女子からの視線は、まだちょっと冷たく感じる。ひそひそ話しているようにも感じる…
「やっぱり混んでるなあ」
「昼休みは3つのパターンがあって、ローテーションするの」
歩ちゃんがそう説明する。
「私たちは今2グループです。今は、1グループが終わりかけて2グループが来ているところなので特に混んでいるよ」
凛ちゃんがそう続けた。
やっぱり、クラスの子と来てよかった。
ディスプレーにメニューが映っていた。選択肢の多さ。カラフルさ。
前の学校の、A定食・B定食・カレー・ラーメンしかない食堂とは大違いだ。
「選んだら、その列に並んで」
伊織ちゃんがそう言ったが、複数の列は結構並んでいて、一人で並ぶには心細かった。
「みんなは?」
「私はAランチにするよ」
歩ちゃんがそう言って、他の二人もそうした。僕もAランチの列に並んだ。
番が回ってきた。
うーん、やっぱり、女子ばかりのためか、ご飯が少ない…
「足りそう?」
凛ちゃんが後ろから声をかけてくれた。
「少なかったら、大盛りできるよ」
「大盛り?!」
「『大盛りお願いします』って言えばいい」
小柄でひ弱な僕は、普段から少食で、大盛りなんて頼んだことなかった。
でも、頼んでみるか…
「あ、あの…大盛り…お願いします」
「はいっ、お待たせしました」
出てきたご飯は、僕の感覚では普通盛りくらいだった。これなら足りそうだ。
それでも、大盛り初体験、っていうのは、ちょっといい気分だった。
最後に取ったメニューの支払いである。
専用の台にトレーを置くと、目の前のモニターにメニューの名前と金額が表示される。
この学校には学生証にICカードの機能が組み込まれており、お金をチャージすることで食堂や売店で使えるのだ。
モニターの横の読み取り機に学生証をタッチし、支払いが完了する。
「全体の流れはわかったかな?」
凛ちゃんが言う。
「うん、ありがとう」
「お昼はみんな一緒だから、わからないことがあったらまた聞いてね」
「うん」
先に注文と支払いを終えたクラスメートのいるところに移動し、みんな揃ったところで食事を始める。
みんな笑顔だし、和気藹々としてて、前の学校よりも楽しいのは明らかだ。