君の人生、変えてあげる。 543
「ありがとう」
沙羅ちゃんは僕だけにそう言ったような気がした。
沙羅ちゃんと僕の行動から周りにいたみんなが何か気づいたのか、一度身体に塗ったクリームを拭き始める子が出てきた。
「ごめんたっくん、調子に乗りすぎた」
胡桃ちゃんが謝る。
「僕は気にしてないから……あんまりみんなの前だと恥ずかしいけど、こうやっておおっぴらな場を作るより一人一人と仲良くなれる方がいいかな」
「それに早く気づいておくべきだったなぁ…」
飛鳥ちゃんが申し訳なさそうに頭をかく。
そこからは普通にいろんな子と話していく。ちょっと、服を着ようかなあ、と思うのだが、なかなかそういう切れ目がなかった。
日が沈み、何人かの子が、脱いだ子は服を着て、帰って行く。そうして、いつの間にか、飛鳥ちゃんと胡桃ちゃんと海里ちゃんと僕が残った。
「たっくんお疲れ」
胡桃ちゃんが声をかけてくる。
「結局そのままにしちゃってごめん」
「僕もタイミングを見失ってて…」
「ごめんね、なんか暴走しちゃった」
飛鳥ちゃんが謝る。さっきからずっと申し訳なさそうにしてて、気にしなくていいよ、とそっと肩を叩く。
「でもさ」
胡桃ちゃんが言う。その言葉は、奥に立つ海里ちゃんに向けて。
「ずっと待ってたんでしょ?」
「……………………今日はもう、無いと思ってた」
「聞いて」
飛鳥ちゃんが言う。三人が視線を向ける。
「ほんとは、今日、たっくんには、1組みんなの、彼氏で、ずっと、いてほしい、って言おうと、思ったんだ」
三人とも黙って聞く。
「でも、もし、たっくんが、そうじゃない、誰か、一番の人がいる、と言うなら、それは、たっくんが選ぶこと」
一番の人…
頭の中で、深く、深く考える。
クラスのみんなのこと、大好きだ。ほかのクラスの子、上の学年の方、先生、それ以外にも…今ここで、誰か一人を選ぶということ。それを決めるのは…とても難しい。
「どうかな、たっくん」
飛鳥ちゃんはあえて感情を出さずに尋ねてくる。
「…………今すぐには、誰が一番好きかは、決められない。言えない。選べない……もしかしたら期待されてたかもしれないけど、その答えはまだ……ごめん」
今の気持ちを正直に伝えた。
「ううん、大丈夫。そんな突然言われたら、困るよね」