君の人生、変えてあげる。 55
「来た来た。こっちだよー」
飛鳥ちゃんが声の方向に手を振り、程なくして2人もやってくる。
「お、噂のイケメン君!」
「みどりちゃんも一緒だね」
片方はショートボブにノンフレームの眼鏡。背も高くていかにも勉強の出来そうな風貌。
もう片方は小柄だけどツリ目でいかにも強気そうな性格っぽい外見、縦ロール…漫画でよく見るお嬢様っぽい髪型が特徴的だ。
「4組の委員長の三島渚ちゃんと5組の委員長の一条可憐ちゃん」
飛鳥ちゃんが2人を紹介する。
「よろしく」
二人に向かって会釈する。
外見はどこかとっつきにくそうな感じのする2人だけど、話してみるとそうでもない。
すぐに仲良くなれそうだ。
「アスから拓真くんの名前聞いて、お母さんに話してみたらね、拓真くんのお母さんと同級生じゃないかって」
可憐ちゃんがそう言う。
「えっ、それ本当?」
「そう、真央副会長は、結構印象的だったみたい。聡美会長…今の理事長 と名コンビで」
「そうなんだ…母さんも結構目立ってたんだな」
「覚えているか分からないけど、うちのお母さんのこと…ええと、旧姓の綾野で言った方がいいね…綾野華子って覚えているか、とか聞いてみて」
「うん、聞いてみる」
「そろそろ食べ始めよう…いただきます」『いただきます』
飛鳥ちゃんの一言で、一同は昼食を食べ始める。
「ところで、みっちゃんは?」
飛鳥ちゃんが誰にともなく聞いた。
「あ“ごめん、行けなくなった”って、ここ来るときに聞いた。言い遅れて申し訳ない」
渚ちゃんがそう言って、ちょっと声をひそめ、僕たちに多少頭を寄せるように言った。
「実は、ちょっと不穏な話がある…私も声をかけられたんだけど…」
渚ちゃんは、まず前提の説明として、この、2組の遥ちゃんを含む6人の委員長の中で、渚ちゃんと、6組の明智充代ちゃんは高等科から涼星に来たんだ、と言った。
「公立の共学の中学から、女子校を選んで来たところに男子がいる、っていうことは、内部進学の人とはまだ違う思いもある…あ、ごめん、もちろん、酒本君が悪いって言っているのではないし、アスとかに文句があるわけでも、もちろんないよ」
「う、うん」
「わかってるよ」
「それで、そういう外部生を誘う、こういう話が…」
渚ちゃんの話した内容は次のとおり。
外部生に対していわゆる「反対派」が働きかけ、共学化反対の署名活動を行っているという噂。
一部では、生徒の両親が地域住民にも働きかけているとか…
「それって酷くない?」
「ちょっとやることが行き過ぎているような気がするなぁ…」
飛鳥ちゃんとみどりちゃんが言う。